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スラトコの思い出 〜セルビアのおもてなし文化〜

【文/古賀 亜希子】

新しい1年が始まりました。みなさんいかがお過ごしでしょうか? 年末年始もホームパーティーをして、友達や親戚をおもてなしというわけにはいきませんでしたね。

セルビアでは、どんなおもてなし文化があるのでしょうか? 今日はそのひとつ、私が体験した「スラトコ」についてお話したいと思います。

2019年初夏、私はセルビアを訪れていました。滞在中に、友人の実家に遊びに行く機会がありました。首都ベオグラードから南西に位置する「ゴロビリェ」という小さな街です。

その時のことです。私たちは夜、他の友人たちと夕食の予定があり、待ち合わせをしていました。その前に親戚の家に「ちょっとあいさつ」をしてから行くことに。親戚の家は、車で数分離れたところにあり、自然に囲まれた素敵なテラスがついています。おばあちゃんやお孫さんたちが、いつもゆっくりおしゃべりをして過ごす場所のようでした。そこで私を待っていたのが「スラトコ」の儀式でした。自家製のジャムが入ったガラスのお皿と、水が入ったコップ、そしてスプーンが運ばれてきます。これ!これです。

2019年4月、新橋のギャラリーてんで「大使秘書ティヤナのセルビア紹介」というイベントを開催した時のことです。その時に、ティヤナがセルビアのおもてなし文化「スラトコ」について説明してくれました。こちらの映像をご覧いただきましょう。

さあ、この時ティヤナから学んだ通りに、私はスラトコの礼儀作法を披露します。まずは、スプーンでジャムを一口とって、ぱくり。セルビアのジャムには、プラムやオレンジ、ブルーベリーなどいろいろな種類の果物があるそうですが、出てきたのはいちごのジャムでした。もちろん手作りです。これが、想像以上に美味しい!「スラトコ」という言葉は、もともと「甘い」という意味に由来するそうですが、とっても甘くて、ちょっと酸っぱく、旅で疲れた私の身体に染み渡ります。そして、一口食べた後は、すぐに水を飲みます。これが私の初めての「スラトコ」体験となりました。それまでセルビアの家庭はたくさん訪問していましたが、都会でこの文化にお目にかかる機会はなかなかありません。とても貴重な体験でした。

スラトコに続いて、「ラキヤ」(セルビアの蒸留酒)が出てきます。ラキヤで乾杯して、1杯、2杯・・・。「セルビアコーヒー」ももちろん! 友人たちのとめどないおしゃべりは延々と続き「ちょっとあいさつ」が、数時間の滞在となり、次に予定していた約束に間に合わなかったことは、言うまでもありません。(約束のお相手も、私たちの遅刻を全く気にしていなかったので、ご心配なく)

初夏のセルビアで体験した、素敵な「おもてなし」でした。


【文/古賀 亜希子】写真家。成城大学芸術学科を卒業後、東京綜合写真専門学校にて写真を学ぶ。国内外で作品を発表。2009年、ベオグラードでの個展開催をきっかけにセルビアが大好きになり、セルビアと日本の文化交流展覧会を多数企画。イェレナ・イェレミッチ著『イェレナと学ぶセルビア料理』の企画・翻訳に携わるなど、 最近は専らセルビア料理を研究中!

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