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セルビアのキリル文字アルファベットパズルを買ってみた

表記方法はキリル文字とラテン文字の2種類

日本語には漢字、ひらがな、カタカナという3種類の文字があります。一方、セルビア語にはキリル文字とラテン文字の2種類が存在します。キリル文字はロシアでも使われているので、一度は目にしたことがあるかもしれません(例えばБГИなど。ひと昔前、メールやインターネット上で顔文字が見られましたが、こんなふうに→(;゚Д゚)、このДは実はキリル文字です)。一方、ラテン文字はいわゆるローマ字のことで、私たちに馴染みのある文字です。

セルビア語のキリル文字とラテン文字はそれぞれ30個ずつあり相互変換が可能です。つまり両文字は表記が異なるだけで読み方は同じ。例えば、キリル文字Гはラテン文字だとGと書きますが、どちらもと読みます。その点ではひらがなとカタカナの関係に近いと言えます。ただし、ひとつの文章に両方は混在せず、使用場面によって使い分けることもありません。

セルビア共和国憲法第10条には「公用文にはキリル文字を使用する」と明記されています。そのため政府や官庁、役所などが発行する公文書はすべてキリル文字で作成されます。逆に言えば、公用でなければどちらを使用しても問題ありません。例えば、新聞の場合、1904年創刊の『ポリティカ』紙はキリル文字、国内最大発行部数を誇る『ブリッツ』紙はラテン文字で記事が掲載されています。新聞以外にも、テレビ、書籍、店の看板、レストランのメニューなど、表記はばらばらです。

セルビアではまずキリル文字から習いますが、セルビア人は普段から両方の文字に囲まれて生活しているので、どちらが得意、不得意というのはありません。セルビア人に「キリル文字とラテン文字、どちらの方が読みやすいか」と聞くと「どちらも全く同じだ」と答えます。私の場合はキリル文字で埋め尽くされた書類や記事を見ると、今でも萎えてしまうのが正直なところです。やはり慣れ親しんだラテン文字の方が頭にすんなりと入ってきます。セルビアのウェブサイトは文字表記を選択できる場合が多いのですが、どうしてもラテン文字を選んでしまいます。

キリル文字とラテン文字の対応表。同じものもあれば、ラテン文字と見せかけて実はキリル文字というややこしいパターンも
キリル文字の知育玩具恐るべし

私は今東京に住んでいて、セルビア人の妻と保育園に通う2人の子供がいます。妻は日本語を話せますが、子供たちにセルビア語を覚えてほしいので、普段の生活からセルビア語で話すようにしています。しかし、私たちの期待に反して子供たちが使うのはほぼ日本語。日本語に囲まれた環境にいるとどうしても日本語が先に出てきてしまいます。何とかセルビア語に触れる機会を増やそうと、セルビアにいる家族とコミュニケーションを取ったり、セルビア語の絵本やYouTubeを見たりしながら、苦心する毎日です。

当然、言葉のほかにキリル文字も覚えなければいけません。何かいい方法はないかと模索していると、セルビアには乳幼児期からキリル文字を覚えられる知育玩具が存在するという情報をつかみ、日本在住のセルビアの友人が一時帰国したときにお願いして、買ってきてもらいました。

それは文字と絵を組み合わせる木製のパズルでした。例えば、キリル文字のAAвион(飛行機)の絵が描かれた枠に、ББубамара(てんとう虫)の枠にはめていくといった具合です。子供たちは最初の方は覚えるのに苦労していましたが、吸収力は早く、あっという間に文字と絵を結びつけることができました。加えて、その文字の発音もできるようになりました。

キリル文字の木製パズル。カラフルでかわいい絵が印象的。すべての読みと日本語訳はページ下部を参照
文字をはめたところ。2つ見つからず、どこかに無くしてしまったようです(涙)

いい教材に出合えたのでとても満足しているのですが、私の興味は別のところに向いていました。例えば、絵のチョイスです。「なぜこの絵になったんだ!」というものがいくつか見られ、突っ込みどころがあります。

例を挙げると、釘(Ексер)、針(Игла)、釣り針(Удица)のどこか似たもの同士は「ほかにも選択肢があったのでは?」と思ったのですが、他社のアルファベットパズルの絵柄でも使われていることが多く、どうやらセルビア人にとっての定番らしいです。Њは動物の鼻(Њушка)でかなりマニアックな印象を受けますが、そもそもЊから始まる単語があまりないので致し方ないらしいです。

児童(Ђак)と麻袋(Џак)に至っては、両方とも「ジャーク」と読むので、「なぜこんなに紛らわしいことを!」と文句を言いたくなるのですが、発音が全く違うのです。カタカナで書いたら同じですが似て非なるもの。私は単語だけを聞いた場合、いまだに聞き分ける自信がありません。

児童(Ђак)はジャークと読む
麻袋(Џак)もジャークと読む。日本人には違いがよく分かりません

あとは、注視すると、はめる側の文字は大文字なのに、枠側に書かれている字はすべて小文字です。「これはあきらかにミスじゃないか!」とぶーぶー言っていたのですが、それは新作バージョンで改良されていました(ただし、絵のデザインも変更。かわいさがなくなり、なぜかリアル路線に)。

突然のリアル路線となった新作バージョン。なぜか絵のデザインが2点(「飛行機→車」「カタツムリ→犬」)変更されている。木枠に書かれている文字がすべて大文字になったのはGOOD(出典:Pino toys)

いずれにしろ、知育玩具としては大変質が高く、木製の優しい手触りもあって、子供たちは楽しく安全にキリル文字を学ぶことができます。ちなみにラテン文字バージョンもあるので、並行して使うと効果的かもしれません。

以上、今回はキリル文字について簡単にご紹介しました。「覚えるのが大変そう」と思われるかもしれませんが、セルビア人の言葉を借りれば「キリル文字はたったの30個。日本語は漢字、ひらがな、カタカナあわせて何個あるのよ!」とのこと。確かにそうですね。

アルファベットキリル文字ラテン文字読み方意味
ААвионAvionアヴィオン飛行機
ББубамараBubamaraブバマーラてんとう虫
ВВозVozヴォーズ電車
ГГитараGitaraギターラギター
ДДрвоDrvoドゥルヴォ
ЂЂакĐakジャーク児童
ЕЕксерEkserエクセル
ЖЖабаŽabaジャーバカエル
ЗЗецZecゼッツウサギ
ИИглаIglaイグラ
ЈЈежJイェージュハリネズミ
ККоњKonjコーニィ
ЛЛептирLeptirレプティル
ЉЉуљашкаLjuljaškaリュリャシュカブランコ
ММачкаMačkaマチュカ
ННаочареNaočareナオチャレめがね
ЊЊушкаNjuškaニュシュカ(動物の)鼻
ООловкаOlovkaオーロヴカ鉛筆
ППужPプージュカタツムリ
РРибаRibaリーバ
ССунцеSunceスンツェ太陽
ТТрубаTrubaトゥルーバトランペット
ЋЋуранĆuranチューラン七面鳥
УУдицаUdicaウディツァ釣り針
ФФокаFokaフォーカアザラシ
ХХлебHlebフレブパン
ЦЦветCvetツヴェト
ЧЧекићČekićチェキッチとんかち
ЏЏакakジャーク麻袋
ШШеширŠeširシェシル帽子(ハット)

文/小柳津 千早

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