セルビア在住の美術史研究家である山崎佳夏子さんがベオグラードのギャラリーをめぐり、旬の展覧会やアーティストを紹介しながら現在のセルビアアート事情を独自の視点で語ります。
【第7回】ファンタジー・アート・ビエンナーレとセルビア現代絵画の世界


セルビアも日本も変わらないなと思えることの一つが秋。市場には赤パプリカやプラムが山のように並び、みなこぞって市場に買いに行く。赤パプリカはアイヴァルなど冬の保存食を、プラムはラキヤ酒やジャムを作りのために使われる。セルビアは冬の方がクリスマスやスラヴァなどの家庭でのお祝いが多いので、そんな冬に向けて準備をする実り豊かな季節が「食欲の秋」だ。そして毎年ベオグラードで一週間行われる国際ブックフェアでは、特に週末は国際展示場が人で満杯になる。普段あまり本を読まない人でも本を手に取り、たくさん本を購入していく。まるでお祭りのようだがこれもセルビアの「読書の秋」だ。
【第6回】Blok 45を彩るストリートアート


イースターを過ぎるとセルビアは一気に活気に満ち溢れる。日は長くなり、日没は19時半を過ぎるので仕事や学校が終わった後の人たちで夕方の公園はとても賑やかだ。寒くて冬の物悲しい景色から春になると一気に花が咲き木々が緑色に芽吹くように、人々も外に出始めるので冬と夏では全く違う景色が見られる。
今回のベオグラードアート通信は美術館やギャラリーを離れて、ベオグラードの旧市街の対岸に広がる新市街・ノヴィベオグラードの団地群の一つであるBlok 45(45団地)のストリートアート(グラフィティアート)を紹介したい。
【第5回】ウロシュ・プレディチとヴォイヴォディナのセルビア美術


EUの欧州文化都市事業でノヴィサド市が2022年の都市に選ばれたことで日本とセルビアの間でも美術や文化の交流が行われたことは記憶に新しい。ベオグラードから約100キロのところにあるノヴィサドはヴォイヴォディナ自治州の州都で、長くオーストリア文化の影響を受けていた土地だったため、現在も首都のベオグラードと並ぶほど文化活動が盛んだ。
【第4回】現代美術の行方〜ベオグラード現代美術館のムルジャン・バイッチ展を見て〜


ベオグラードを訪れた人でもベオグラード現代美術館へ行ったことがある人は少ないだろう。まず2007年から2017年までの十年間は改装のため閉館していたので、戦争が落ち着いて日本からセルビアを訪れる人が増えた時期に開いていなかった。
【第3回】とびっきりの子どもの世界を描く画家ミレナJNK


ベオグラードの中心地から坂を下ったところにあるドルチョル地区は、トラムの通るツァーラ・ドゥシャナ通りを境にアッパーエリアとロウアーエリアに分かれる。
【第2回】歴史と今が交差する。セクリッチ夫妻のイコンコレクション


二〇二二年七月頭。日本でも今年は六月中にもかかわらず連日酷暑だというニュースが流れていたそうだが、ベオグラードも同じで連日最高気温34℃…。
【第1回】ナイトスポットにある新たなアートハブ


ここ数年、ベオグラードでは新しいギャラリーがどんどん誕生している。7年前にベオグラード美術大学の一年生だった人が「僕が入学した頃に比べたら、今はその倍ぐらいギャラリーがある感じ」と言うほどの大きな変化だ。
【プロフィール/山崎 佳夏子(Kanako Yamasaki)】美術史研究家。ベオグラード在住。岡山大学大学院在籍中に1年半ベオグラードへ留学し、セルビアの近代美術の研究をする。一時帰国を経て再度ベオグラードへ渡航し結婚。2020年に生まれた長男の育児中。主な著作に『スロヴェニアを知るための60章』(共著、明石書店、2017年)、『ボスニア・ヘルツェゴヴィナを知るための60章』(共著、明石書店、2019年)(共に美術の章の担当)。