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セルビアのクリスマスは1月7日! 豚の丸焼きでお祝いしよう

セルビア正教会のクリスマス(降誕祭)は1月7日です。これはセルビア正教会が旧暦(ユリウス暦)を採用しているためです。クリスマスはセルビア語で「ボジッチ(Božić)」と言います。一方、クリスマス前日の1月6日は「バドニ・ダン(Badnji dan)」と呼びます。

クリスマスの飾り付け
クリスマス前日の朝はナラの木を切りに山へ

「バドニ・ダン」の過ごし方をご紹介します。セルビアの田舎では夜明けとともに家長が山に入り、ナラの木の一部を斧で切り落とし、家に持ち帰ります。このナラの木は「バドニャク(Badnjak)」と言います。都会では「バドニャク」を採集するのが難しいので、小ぶりのものが青空市場や路上で売られます。

「バドニャク」は玄関の横に立てかけておき、日没とともに幹を切り分け、家の暖炉で燃やします(教会で燃やす儀式も行われます)。その際、乳香を焚き、家族の幸せを願います。テーブルの上には豊作を祈る麦の新芽、くるみ、ドライフルーツなどを並べます。また、キリスト(ハリストス)の誕生にならい、床に干し草を敷きます。子どもがいる家庭では、干し草の中に隠されたお菓子を探すゲームが行われます。これらの習慣は地方や各家庭によって多少の差はあります。

「バドニャク」を切る様子
教会に「バドニャク」を持ち込む人たち

「バドニ・ダン」は正教の慣例に従い、肉、卵、乳製品を摂取しません。その代わり、食卓には魚や豆料理が並びます。魚はマス、ナマズ、コイといった淡水魚のほか、冷凍輸入されたメルルーサが人気です。調理方法は小麦粉をまぶした素揚げで、味付けはシンプルです。豆は白インゲン豆のオーブン焼き「プレブラナツ」がよく食べられます。

食事の後は、料理や食器を片付けずにひと晩置いておきます。キリストのために残しておくのです。翌朝、テーブルをのぞき、食べた形跡を探すのもひとつの楽しみです。

豆知識その1

セルビアではサンタクロースは新年(1月1日)のシンボル。クリスマスではなく、新年に子供たちにプレゼントを持ってきます。サンタクロースのことをセルビア語で「デーダ・ムラーズ」と言い、直訳すると「霜おじいさん」。一方、クリスマスツリーのことは「ノヴォゴディシュニャ・イェルカ」と言い、「新年のモミの木」と訳されます。 ちなみにセルビアの新年は旧暦に従い1月14日です。
クリスマスはごちそうが並ぶ

日が変わり、クリスマス当日は豪華な料理がテーブルに並びます。田舎では朝から豚の丸焼きの準備です。豚を屠畜した後、鉄製の串で刺して、炭火の上でぐるぐると回しながら、じっくりと火を通します。焼き上がるまで数時間かかるので、お酒を飲みながら待ちます。お酒の種類はビール、ワイン、そしてラキヤと呼ばれる果物の蒸留酒(ブランデー)です。原料となる果物はプラム、アンズ、りんご、ぶどう、マルメロなど様々です。田舎では蒸留器を使った自家製のラキヤが作られます。アルコール度数は40度~50度とかなり高いです。

豚の丸焼きの味付けはシンプルで塩のみ。ときどき「これが隠し味だ」と言ってビールをかける人もいます。焼いている間、豚から香ばしい脂が流れ出てきます。これをパンに付けて食べるのが最高においしいです。知る人ぞ知る裏メニューです。

豚の丸焼きが完成すると本格的な食事の始まりです。前菜(サラミ、チーズ)、トマトときゅうりのサラダ、鶏肉と野菜のスープ、「サルマ」と呼ばれるセルビアのロールキャベツなどが食卓を彩ります。豚の丸焼きは手ごろなサイズにカットして食べます。「この部位がおいしいんだ」とみんなでわいわい話しながら食事を楽しみます。豚の丸焼きは一回の食事で食べきることができないので、冷蔵庫に保管しておき、次の日もその次の日もメイン料理として出されます。

豚を焼いている様子(手前)
特製のパンで運試し

最後に、クリスマスの特製パン「ボジチュナ・チェスニッツァ」をご紹介します。これは直径30センチぐらいの円形型のパンです。食事の始めに家族みんなでパンをぐるぐると回した後、一斉に引きちぎります。パンの中にはコインが入っていて、引きちぎったパンの中にコインが入っていれば、その人に幸運が訪れると言われています。

クリスマスの特製パン「ボジチュナ・チェスニッツァ」

クリスマスはセルビア人にとって一年で最も大切な祝祭日です。家族全員が集まり、ゆっくりと過ごすものです。また、「クリスマスの行いは一年間続く」と信じられており、家族と散歩に出かけたり、勉強をしたりして、善い行いを心掛けます。そうして幸せな時間をみんなで共有しながら、家族の絆を深めていくのです。

豆知識その2

クリスマスの特別なあいさつがあります。セルビア人の友人がいたら言ってみましょう!
「フリストス セ ロディ(Hristos se rodi)」
(意味:キリストが生まれた)
受け答えは
「ヴァイスティヌ セ ロディ(Vaistinu se rodi)」
(意味:本当に生まれた)
と言います。


【文/小柳津 千早】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う女性と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で400人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半勤務。現在はセルビア共和国大使館で通訳として働く。休みの日は妻と子供2人で公園を散歩するのが好き。

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