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セルビアの小さな村で行われる「世界一硬いイースターエッグ」を競う大会とは?

イースターエッグの硬さを競う参加者(写真提供:Živko Ugrenović)

【文/小柳津 千早】

セルビア北部にモクリン(Mokrin)という人口6000人ほどの小さな村があります。そこでは毎年、セルビア正教の復活大祭(イースター)の時期に「トゥツァニヤーダ(Tucanijada)」と呼ばれるイースターエッグの殻の硬さを競う世界大会が開催されます。大会の歴史は古く、30年以上も続く村の恒例イベントで、セルビア国内はもちろん、近年は外国からの参加者も増えています。

そもそもイースターには、家族や友人同士で玉ねぎの皮で染めたゆで卵をぶつけ合うという風習があります(※最近は食紅で染めたり、シールで飾り付けすることも多いです)。殻にひびが入ったら負け。ゲーム感覚で楽しめて、運も左右するので、子どもも大人も盛り上がることができます。

「トゥツァニヤーダ」のルールはシンプルですが、とても厳格。イースターエッグは鶏卵のみで、染色方法も決められています。競技は参加者同士が1対1で向き合い、自ら持ち込んだ卵を手にします。審判はすぐ隣で競技の行方を見守り、不正行為の監視と勝敗を決定します。一人が卵のとがった側を相手の卵にコツコツと当てていき、最初にひびが入った方が負けです。最後まで勝ち抜いた者が優勝を手にします(賞金は5万ディナール=約5万円)。優勝者はその場で自分の卵を割り、半分を審判に半分を自分で食べて、卵が本物であることを証明しなければいけません。

参加者の中にはこの大会に人生をかけている人もいます。これまで何度もタイトルを手にしてきたバチカさんは、大会のドキュメンタリー映画「World champion(セルビア語タイトル:Prvak Sveta)」(2016年、ラナ・パヴコフ監督)の中で、「鶏選びが一番重要で、多くの時間と労力が必要だ。硬い卵を産む鶏を求めて、各地を探し回っても、満足する卵にありつけないことが多い。仮に有力な鶏を見つけても、月日が経つと突然失踪するケースもある」と話します。

大会で使用される卵はイースターエッグでなければいけません。つまり、卵をゆでて、染める必要があるのです。その工程で卵の殻にひびが入ったら元も子もないので、参加者は何十個も一度にゆでます。その中から大会エントリー用の最強の1個を選ぶ必要があるので、なかなか大変な作業です。最後は運任せと思いきや、選別の「プロ」は、卵を前歯にコツコツと当てて、その音の高低で殻の硬さを判断するようです。

昨年は新型コロナウィルス感染症の影響で大会が中止されました。今年も開催が危ぶまれていましたが、主催者側は規模の縮小と無観客での開催を決断。参加者は事前に卵をエントリーして、卵のぶつけ合いは審判に委ねる形となりました。今年の大会はイースター当日の5月2日に開催されます。大会の様子はYouTubeで生中継されるので、皆さんもぜひご覧になってはいかがですか?

トゥツァニヤーダ(イースターエッグ割り世界選手権)

日時:2021年5月2日(日)

子供の部は16時30分(日本時間)から

大人の部は17時30分(日本時間)から

下記のチャンネルで生中継されます

https://www.youtube.com/channel/UC1Mg0UxpvozghN8JJNRyvvw

大会にエントリーされたイースターエッグ(写真提供:Živko Ugrenović)

たまねぎの皮を使ったイースターエッグの染め方はTiki’s kitchenで公開中です。


【文/小柳津 千早】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う女性と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で400人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半勤務。現在はセルビア共和国大使館で通訳として働く。休みの日は妻と子供2人で公園を散歩するのが好き。

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