【文/古賀 亜希子】
セルビアからニュースが届きました。友人のラザル・クンドヴィッチ(LAZAR KUNDOVIĆ)さんが自身のブランドを立ち上げ、新しい商品開発に取り組んでいるとのこと。嬉しいニュースなので、皆様にセルビア発のレザーブランド【HEROY】とデザイナーのラザルさんをご紹介したいと思います。
ラザルさんは、2020年にブランド【HEROY】を立ち上げ、気鋭のデザイナーとして今セルビアで注目の存在です。
【HEROY】はアートとデザインが交差する活動。常に新しい挑戦をし続け、幅広い商品を作りたいという向上心あふれるフレッシュなブランドです。
ブランドは、セルビア人ピアニスト、ミンカ・ポポヴィッチ(Minka Popović)さんとのコラボレーションでスタートを切ります。
このミュージックビデオは、【HEROY】のプロモーションのために作られ、舞台美術、撮影、編集にいたるまでラザルさんが手がけたものです。
ピアノの下に見えるのはセルビアの伝統的な絨毯「キリム」。ピアノの周りにはライトが配置され、ミニマムな舞台美術を完成させます。これらの2つの要素は「過去」と「未来」を同時に存在させる試みでした。
ピアニストのミンカさんは、映像の中で作曲家ヨシプ・ストルチェル・スラヴェンスキ(Josip Slavenski/1896-1955)の「ミニチュア」を演奏します。これはセルビアの伝統的な音楽を取り入れた楽曲です。
ミニチュア:
1. Srpsko kolo / Serbian Reel Dance (0:15~)
2. Čačanska igra / Čačak Dance (0:48~)
3. Šta mi je milo / How I love it (1:47~)
4. Kolo / Reel Dance (3:20~)
※カッコ内はYouTube内での再生時間
ラザルさんが作曲家スラヴェンスキの楽曲を選んだのは、芸術家としての革新的な姿勢に強い影響を受けたからです。スラヴェンスキは1930年代に電子音楽の実験をしたことでも有名でした。当時それはとても画期的なことでした。
スラヴェンスキはクロアチアで生まれ、ゼニート主義(Zenitism)と呼ばれる芸術運動に参加しました。ゼニート主義は1921年にユーゴスラヴィアで始まった前衛芸術運動です。
彼らの前衛芸術運動は、文芸、美術、演劇、音楽など様々なジャンルにまたがったもので、西洋文化を模倣するのではなく、この地から生まれた文明と関連のある文化を現代的に構築し、発展させることを志していました。
「【HEROY】もまたオリジナリティを大事にし、進化し続けるブランドでありたい」とラザルさんは語ります。
ブランドのローンチプロジェクトはまさに「music manufest」だと言えるでしょう。ラザルさんの活動がデザインの枠に収まらず、現代美術として成立していることを感じさせます。
My Serbia Galleryでは、ラザルさんが手がける数々のプロジェクトの中から、新たに始まったばかりの革製品をご紹介いたします。
セルビアには質の良い革製品がたくさんあります。ラザルさんは、自身が生み出す革製品が誠実で、クラシックで、純粋で、丈夫で、エレガントなものでありたいと考えます。そして何より時代を超えて愛されることを望んでいます。
近い将来、高い志と情熱を持ってブランドを手がけるラザルさんの製品が、日本の皆様の元に届くことを心から願っています。
作品ページはこちら
【文/古賀 亜希子】写真家。成城大学芸術学科を卒業後、東京綜合写真専門学校にて写真を学ぶ。国内外で作品を発表。2009年、ベオグラードでの個展開催をきっかけにセルビアが大好きになり、セルビアと日本の文化交流展覧会を多数企画。イェレナ・イェレミッチ著『イェレナと学ぶセルビア料理』の企画・翻訳に携わるなど、 最近は専らセルビア料理を研究中!