【文/古賀 亜希子】
先日、Tiki’s kitchenの撮影をしました。
この日の料理は「ムチュカリッツァ(Mućkalica)」。ベオグラード育ちのティヤナにとって、この料理は家庭で作るというより、レストランで食べることのほうが多かったそうです。私もクネズ・ミハイロヴァ通りの老舗レストラン「コラーラツ(kolarac)」で知りました。豚肉とパプリカをトマトソースでじっくり煮込み、ピリ辛で食欲がそそられる逸品です。日本人の口によく合います。セルビアを知る日本の友人に、好きなセルビア料理は何かとたずねると、だいたい最初に出てくる料理でもあります。
撮影は毎回、メニュー選びから始まります。メニューが決まったら、ティヤナがレシピを研究して、試作。ティヤナのレシピとメモが届きます。私はこれを「ティヤナの料理手帖」と呼んでいます。それから翻訳して整えます。
毎回驚かされるのがレシピの分量です。セルビア料理は基本的に大皿料理で、煮込み料理などは大量に作って何日かかけて食べるので、日本人が驚くような量です。いつも皆さまに紹介するレシピは、日本の家庭でも作りやすい量(だいたい半分くらい!)に調整しています。皆でレシピの最終チェックをして、撮影に入ります。
この日、ティヤナの料理手帖にはこんなことが書いてありました。
「南東部レスコヴァツ(Leskovac)の伝統料理です。レスコヴァツはセルビアで一番美味しいお肉を作ることで有名な町です。香ばしくグリルした何種類かのお肉に、パプリカ、野菜を加え、唐辛子と一緒にぐつぐつと土鍋で煮込んでいきます。この料理はセルビア南東部やロマの人々の情熱的な性格を反映していると言えるでしょう。 じっくり煮込んだ熱々の肉、スパイシーなソース……体の芯から温まり、元気が出ます。」
撮影が終わったら、皆でその日作った料理を食べます。料理は毎回どれも美味しく、レストラン気分が味わえます。セルビアにいるかのような、のどかで贅沢な時間が流れます。
今回の撮影動画はYouTubeチャンネル「Tiki’s kitchen」から見られます。お見逃しなく!
【文/古賀 亜希子】写真家。成城大学芸術学科を卒業後、東京綜合写真専門学校にて写真を学ぶ。国内外で作品を発表。2009年、ベオグラードでの個展開催をきっかけにセルビアが大好きになり、セルビアと日本の文化交流展覧会を多数企画。イェレナ・イェレミッチ著『イェレナと学ぶセルビア料理』の企画・翻訳に携わるなど、 最近は専らセルビア料理を研究中!