【文/小柳津 千早】
バルカン半島最大級の書籍見本市「ベオグラード国際ブックフェア」(会期:2024年10月19日〜27日)に家族みんなで行ってきました。
ブックフェアは歴史が長く、1956年にユーゴスラビア時代のザグレブで初めて開催されました。翌年に会場をベオグラードに移し、今年で67回目を迎えます。会場の総面積は約30,000平方メートル。国内外の400を超える出版社や書店などが出展し、書籍のPR、販売、商談が行われるほか、著者のトークショー、討論会、ワークショップなど500以上のプログラムが実施されます。また、毎年1カ国が「来賓」として選ばれ、特設ブース内で自国の書籍や著者の宣伝、講演、セミナーが開催されます(今年はキューバ。2008年には日本が選ばれました)。
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昨年は20万人近くが来場し、ベオグラードで開催される国際フェアの中で最も人気があります。フェア訪問のために地方都市から日帰りのバスツアーが組まれるほどです。
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私がフェアを訪問した理由のひとつは、絵本・児童書の出版社「Pčelica」(プチェリツァ)のブースにあります。ここの広報担当者から「うちの社長が日本で有名な“忠犬ハチ公”の本を書いたから、見に来てほしい」と突如、私のSNS宛にメッセージが来たのです。
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社長兼著者のゴラン・マルコヴィッチさんは大の犬好きで、自身の飼い犬を題材にした絵本『アルチとドーラ』シリーズや、1957年にスプートニク2号に乗せられた宇宙犬に関する絵本『ライカ』を刊行してきました。そして今年の秋に、かねてからの夢であった『忠犬ハチ公』の絵本を発表しました。
「私は日本のハチ公に大変感銘を受け、この感動的な物語をセルビアの人たちに紹介したいと思っていました。ハチ公の飼い主に対する愛情、忠誠心を美しい文章で表現したかったのです」
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ほかには、日本の古典文学や歴史などを専門的に取り扱う出版社「Kokoro」のブースや……、
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日本の漫画を出版する「Darkwood」のブースも訪れました。もちろんセルビア語版です。ここには若者がたくさん集まっていて、日本漫画の人気の高さをあらためて認識しました。
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私は息子たちのために絵本・児童書探しに時間を費やしました。妻の知人がイタリアの絵本を翻訳・出版しているので、お勧めの本を大量に購入しました。
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息子たちが「疲れたー。お腹すいたー」と言い始めたので、意に反して早々と帰ることになったのですが(泣)、本好きなら一日いても全く飽きません。自分の好きなジャンルの本はもちろん、これまで接点がなかった見ず知らずの本とも出合える場所で、新たな活力と刺激をもらいました。
【文/小柳津 千早】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う女性と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で約350人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半、在日セルビア共和国大使館のスタッフとして10年間勤務。2021年10月中旬からセルビアに移住。YouTubeチャンネル「セルビア暮らしのオヤ」で現地の自然、文化を配信中も、今はちょっとサボり気味。