My Serbia(マイセルビア)

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セルビア人は夏休みにどこの海に行く?

【文/小柳津 千早】

セルビア人は海が大好きです。夏休みに海に行くために一年働いていると言っても過言ではありません。セルビアは内陸国で海がないため、ドナウ川のような大きな川や地方を流れる小さな川、湖や池のほとりでのんびりと過ごすこともできますが、あまりにも身近すぎて非日常を味わうことはできません。「待ちに待った夏休みは日頃のストレスから解放されてゆっくりしたい!」。そうなるとやはり海一択となるのです。家族や友人と一緒に海に行き、7~10日間ほどリラックスして過ごすのが、セルビア人の夏休みの一般的な過ごし方です。

セルビア人はどこの海に行くのでしょうか? 一番安く済ませるのなら隣国モンテネグロです。自家用車や電車を使えば半日ほどで行けます。ブドゥヴァ(以下すべてのリンク先はGoogleマップ)、ストモレは安宿も多く、バーやクラブも充実しているので若者に人気ですが、その分、ビーチはいつも混んでいます。モンテネグロは食事も文化もセルビアと似ていて、外国に来たという高揚感を得ることはできませんが、お金をあまり使うことなく海を楽しめるという意味では最適の地です。

クロアチアは世界有数の観光大国です。アドリア海は目を見張るほど美しく、晴れた空と澄んだ海、白い壁と赤茶色の屋根の家々がつくりだす光景は一生の思い出として心に残ります。クロアチアと言えば、ドゥブロヴニクスプリトといった世界遺産に指定されている街や歴史地区が有名ですが、セルビア人はあまり訪れません。世界中から観光客がごった返し、ゆっくりできないこととビーチが少ないからです。イストラ半島のプーラポレチュロヴィニ、島しょ部のフヴァルなども人気の観光地ですが、ビーチ目的というよりも街の散策に向いている気がします。クロアチアで海を楽しむなら沿岸部のツリクヴェニツァマカルスカを選ぶ傾向が強いです。セルビアの首都ベオグラードからチャーターバスも出ていて、セルビア人には馴染みの街です。私個人としては、クロアチアの沿岸部や島は小さなビーチが数多く点在して、場所によってはプライベートビーチのような感覚で一日を過ごすことができるので、とても気に入っています。ただし、整備されておらず、岩場が多く、急に深くなるので、泳ぐときは注意が必要です。

フヴァルの街並み(クロアチア)
ブラチュ島・ボルのビーチ(クロアチア)

ギリシャの海はセルビア人の定番中の定番です。目的地として最初の選択肢に上がるのはいつもエーゲ海です。ただし、サントリーニ島(ティーラ島)ミコノス島といった世界的リゾートは敷居が高く、庶民的ではありません。一般的には、陸路で行ける北部のハルキディキ半島タソス島(フェリー使用)、旅行会社のチャーター便などを使って南部のクレタ島ロドス島、イオニア海のケルキラ島ケファロニア島に行きます。ちなみに私は2019年にセルビアから車を運転してハルキディキ半島にある小さな街に行きました。1週間ほど滞在したのですが、街の至る所でセルビア語が聞こえてきたので、ギリシャの風情をあまり感じることはできませんでした。それでも、泊まった宿で提供されたギリシャ料理はとても美味しく、物価も安かったので、充実した時間を過ごすことができました。

ハルキディキ半島の宿(ギリシャ)
ハルキディキ半島・サルティ近くのビーチ(ギリシャ)

あとはトルコ西部のアンタルヤクシャダスボドルムエジプトフルガダ(紅海)、ブルガリアネセバル(黒海)なども人気のスポットです。これらの都市には大きなリゾートホテルが建ち並び、目の前に広大なビーチが広がっています。セルビアの旅行代理店がツアーを組み、航空券、ホテル、食事込みで比較的安価で販売しているので、セルビア人はよく利用します。一日の大半をビーチで過ごしますが、ホテルのプールサイドでゆっくりしたり、地元の観光ツアーに参加したりするなど、ぜいたくな気分を味わえるのが特徴です。なお、最近ではアルバニアの海に行く人も増えています。民族間の対立はいまだ根強く残っていますが、新たな観光地として注目を集めているようです。

昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で外国に旅行することが難しかったのですが、今年の夏はこれまでのストレスを発散するように、休暇を海で過ごす人たちが増えています。国によっては入国時にワクチン接種証明書やPCR検査の陰性証明書の提示が必要なこともあるのですが、セルビアが国を挙げてワクチン接種を進めてきたことが功を奏し、渡航において大きな支障をきたしていません。もし読者の方でセルビア人の友人がいるなら、「今年はどこの海に行くの(行った)?」とぜひ聞いてみてください。きっと上記の国や街が出てくるはずです。



【文/小柳津 千早】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う女性と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で400人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半勤務。現在はセルビア共和国大使館で通訳として働く。休みの日は妻と子供2人で公園を散歩するのが好き。

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