【文/古賀 亜希子】
セルビア・アトリエ訪問記は今回が最終回。画家ミハイロ・カラノヴィッチ(Mihailo Karanović)さんのアトリエを訪ねました。サヴァ教会からほど近い、閑静な住宅地にあります。

2017年にミハイロの作品を東京・銀座にあるSteps Galleryで紹介したことがあります。その時は、都市を描いた油彩を制作をしていて、環境問題への提起がメッセージとして込められていました。

ミハイロは最近、活躍の場をイタリアに移したと聞いていましたが、アトリエで出迎えてくれたのは、そんな環境の変化を示すかのように、大きく様変わりした新作でした。

さあ、イタリアで発表したばかりの作品を見せてもらいましょう。
「Ad Spiritum Sanctum」と題されたシリーズは、まさに芸術の古典的なアプローチと現代的なアプローチを融合させた試みの絵画作品です。
ルネッサンス・バロック時代の写真をインターネットでダウンロードし、加工してオリジナル画像を制作します。AIは使用しません。できた画像を基に、キャンバスに油彩で描いていきます。虹のように色が重なっているのは、画像をRGBチャンネルに分解して、油彩の中でデジタルを模倣していることを意味します。
昨今、芸術はインターネット上で商業化されていき、結果として価値も信頼も失っていきます。ミハイロは、芸術が一時的な利益を目的とした、価値や意味を持たない単なる画像になっていくことに警告をしています。
作品は大きく変わったように見えても、根本にあるのは現代社会への強烈なメッセージでした。ミハイロは、芸術家として変わらずに挑戦し続けていました。


そして、ミハイロは料理も大の得意。家族が集まる時には、いつも美味しい料理を準備してくれます。いつか、Tiki’s kitchenで共演するかも?! 乞うご期待!
【プロフィール/ミハイロ・カラノヴィッチ(Mihailo Karanović)】1980年ヴルシャツ生まれ。わずか10歳で、セルビアの有名アーティストに認められ、絵の基礎を習う。1999年、ノヴィ・サドのデザインスクールでディプロマを習得。ミラノにあるブレラ芸術アカデミーで学ぶ。国内外で、個展やアートフェアに作品を出品。現在はミラノとベオグラードにを拠点に活動をしている。
【文/古賀 亜希子】My Serbia運営者。Tiki’s kitchen撮影、制作。成城大学文芸学部芸術学科を卒業後、東京綜合写真専門学校にて写真を学ぶ。2009年、ベオグラードでの個展開催をきっかけにセルビアが大好きになり、セルビアと日本の文化交流展覧会の企画をはじめ、セルビアの文化を広く日本に紹介している。近年では、セルビアの写真や映像を言葉と共に物語にして発表している。