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未来を決めすぎない人たち【セルビア移住生活:第23回】

【文/小柳津 千早】

セルビア人との会話の中で「ヴィデチェモ(Videćemo)」という言葉をよく耳にします。直訳すれば「見てみよう」。日本語なら「様子を見よう」「そのときになったら考えよう」といったニュアンスです。

これは単に決断を先延ばしにするという意味ではありません。先の状況が分からないのなら、今無理に答えを出すより、状況が見えてきたときに一番いい方法を考えればいい。まだ見えない未来を、あらかじめ細かく決める必要はないという考え方です。

興味深いのは、不確かな未来をそれほど悲観的にとらえていないことです。「絶対に大丈夫」という根拠はなくても、「まあ、何とかなるだろう」と受け止めています。

先のことを考えすぎない

日本では、早めに予定を立て、起こり得るトラブルやリスクを想定しながら準備を進める傾向があります。「もしこうなったらどうしよう」「あの場合は別の方法を考えておこう」と可能性をひとつずつ考え、失敗しないように備える。事前の準備によって防げる問題は多く、物事を確実に進めるうえでは大切な姿勢です。

一方で、考えすぎるあまり不安の種を自ら育ててしまう面もあります。未発生のリスクを恐れて挑戦をあきらめたり、回り道をしたり。慎重さが裏目に出て、自ら選択肢を狭めてしまうのです。

しかし、時間がたてば状況は変わります。思いがけない助けが入り、今は難しく見える道が開けることもあります。だからこそ、今すぐ決める必要のないことまで先回りして答えを出さず、その時々の状況を見ながら、よりよい方法を選んでいく。そんな柔軟さも大切なのかもしれません。

なんだかんだで、何とかなる

セルビアでは、決まっていた予定が急に変わることも珍しくありません。たとえば旅行や移動の際、交通機関が遅れて予定していた方法で目的地へ行けなくなれば、「じゃあ、どうしようか」と別の手段を探します。

自分だけで解決できなければ、誰かの力を借りる。セルビアでは家族や友人とのつながりが強く、困ったときにはすぐに相談します。助けを求めることへの遠慮も、日本ほど強くないように感じます。

頼られた側も、「困ったときはお互い様」と自然に手を貸します。人に頼ることも、頼られることも、ごく日常的なこと。「何かあっても、自分ひとりで何とかしなくていい」。そんな安心感も、先のことを必要以上に心配しない理由のひとつなのでしょう。

そして、物事が思いどおりにならなかったときにも、気持ちを切り替えます。セルビアには「何がいい方向につながるかは、あとになってみなければ分からない」という言葉があります。今は望んだ結果ではなくても、それがこの先どうつながっていくかは分かりません。

何もかも100点になるとは限らない。たとえ70点でも、「これで十分」と受け入れる。うまくいかなかったことをいつまでも引きずるのではなく、「これも何かにつながるかもしれない」と前を向く。

「まあ、何とかなる」。

未来を何も考えないのではなく、今の時点で決めすぎない。思いどおりにならなければ、そのときにまた考えればいい。

そんな肩の力の抜けた楽観性が、セルビアの人たちの生き方にはあるように思います。


【文/小柳津 千早】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う女性と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で約350人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半、在日セルビア共和国大使館のスタッフとして10年間勤務。2021年10月にセルビアに移住し、現在は通訳の仕事のため単身で一時帰国中。YouTubeチャンネル「セルビア暮らしのオヤ」で現地の自然、文化を配信していたが、今は日本にいるため更新がとまっている。MySerbia運営者。