【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】
とても暑かった夏が過ぎ、2か月近くも雨が降らなかった村にも、ようやく秋がやってきました。日中は過ごしやすくなり、朝の空気もひんやり。久しぶりに、まとまった雨も降りました。


セルビアの村では、秋の始まりとともに、「アイヴァル(Ajvar)」作りのためにパプリカを焼く光景が見られるようになります。アイヴァルはローストパプリカのペーストで、セルビアの伝統的な保存食のひとつ。路地や庭先に漂うパプリカの香ばしい匂いが、秋の訪れを知らせてくれます。

アイヴァルは、焼いたパプリカの皮をむき、細かくすりつぶして、じっくりと煮詰めて作ります。このほかにも、各家庭では「ズィムニツァ(Zimnica)」と呼ばれる冬に備えた保存食を仕込みます。野菜を瓶に詰めて保存するもので、数か月間食べることができます。棚には、パプリカなどの野菜を煮込んで作る「ロヴァチュカ・サラタ(Lovačka salata)」、彩り豊かな野菜の酢漬け「トゥルシヤ(Turšija)」、キャベツを発酵させた「キセリ・クプス(Kiseli kupus)」など、さまざまな保存食が並びます。

夏の終わりから秋の初めにかけては、多くの家庭で寒い季節に備えた燃料の準備も進めます。村では薪が中心ですが、石炭を使う家もあります。木を切り、薪を割って積み上げておきます。この時期、村ではチェーンソーの音や斧で薪を割る音が響きます。

朝晩はすでに肌寒く、夜には昼間よりも気温が10度ほど下がることもあります。わが家でも、今シーズン初めて薪ストーブに火を入れ、たんすからウールのセーターやベストを取り出しました。

畑では、夏野菜の最後の収穫を迎えています。トマトやパプリカ、じゃがいもの収穫が終わりに近づくと、今度は秋らしいバターナッツやカボチャが主役になります。

私たちも秋がもたらすさまざまな変化に少しずつ暮らしを合わせています。これから待っている大仕事は、とうもろこしの収穫と、プラムから作るセルビアの伝統的な蒸留酒「シュリヴォヴィツァ」の仕込みです。

そのお話は、次の秋の便りでお届けします。それではまた!

【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】絵本作家。自身の本を通して、子どもたちに農村生活、民俗行事、伝統、家族の価値観を伝える。2024年5月にセルビアの農場の一日を描いた初の書籍『One day on the farm』を出版し、翌年にセルビア児童文学界で最も権威がある「ドシテイのペン」賞を受賞した。ほかにも、農場の四季をテーマにしたシリーズ本も刊行。書店でのワークショップを多数開催している。


