現在鳥取県立博物館で開催中の「ミュージアムとの創造的対話03」展では、2人のセルビア人アーティストの作品を観ることができます。この展覧会は、ある個人コレクターの方のコレクションと、収蔵アーティストによる新旧作が展示され、美術作品における「価値」とは何か、それはいつどのように作られるのかについて考察する内容となっています。
リチャード・セラ、村岡三郎、原口典之などなどそうそうたる顔ぶれ中に、ミラン・トゥーツォヴィッチ(Milan Tucović)とサーシャ・マリャノヴィッチ(Saša Marijanović)の作品が展示されています。1980年代から現代美術作品を集めてこられたコレクターの方が、この数年セルビアのアーティストに注目し、応援してくださったことで、2人の展示が実現しました。
ミラン・トゥーツォヴィッチ(1965年ボジェガ市生まれ)は、日本に3度来日し、旧セルビア共和国大使館や早稲田大学ギャラリーで作品を発表したことは、記憶に残っている方も多いでしょう。ローマ法王から肖像画を依頼されるほどの実力で、セルビアの国民的アーティストでした。残念ながら、2019年に突然の心筋梗塞で亡くなってしまいます。この作品は、トゥーツォヴィッチが最後に来日した時に、「日本の皆に実物を見せたい」という一心で自ら担いできたものでした。その時の彼の想いをコレクターさんがしっかりと受け止め、博物館の会場の一室は、トゥーツォヴィッチの作品を中心に構成されました。
サーシャ・マリャノヴィッチ(1976年マイダンペク生まれ) は、セルビアで気鋭のアーティストとして注目を集める存在です。2019年の「アートフェア東京」では、セルビア大使館推薦枠で作品を発表し、来日する予定でした。(残念ながらコロナウィルスにより叶いませんでした)。繊細なタッチで、一貫して静寂な世界を描き続けるサーシャですが、実は歌が上手で陽気な人柄です。近いうちに、東京で個展を開催する日がくるでしょう。その日をお楽しみに!
展覧会情報
午前9時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
文/古賀 亜希子