【文/古賀 亜希子】
昨年12月、ベオグラードのクネズミハイロバ通りにあるKuća Legataというギャラリーで展覧会を開催するためにセルビアへ行ってきました。展覧会については、セルビア在住の美術史家、山崎佳夏子さんが丁寧に解説してくださっていますので、ぜひこちらをご覧ください。
セルビアへの渡航は5年ぶり。懐かしい友人たちに会ったり、懐かしい場所を訪ねたりする一方で、新しい出会いもたくさんありました。アーティストのアトリエに招かれる機会も多く、刺激ある滞在となりました。何回かに分けて、セルビアで活躍する現代アーティストとそのアトリエをMy Serbiaでご紹介したいと思います。「アトリエ訪問記」どうぞお楽しみください。
はじめにご紹介するのは、セルビアの陶芸作家、イヴァ・ブルキッチ(Iva Brkić)さんです。5年前に、アーティストの友人に連れられて、若手作家の陶器を販売するショップ「Gallery1250」に立ち寄った際に、イヴァさんの作品と出会いました。今では独立したギャラリー「Iva Brkić gallery」を持ち、セルビアで人気の作家として活躍をされています。念願かなって、イヴァさんとお会いすることができました。
イヴァさんの作品は、夢の中のような非日常感に溢れています。ギャラリーには、陶器のショップらしく、ポットやティーカップ、ソーサー、スプーンが並びますが、どこか不思議。そう、イヴァさんの陶器は、食べるため、飲むための、実用性の高い「食器」ではなく、アート作品として成立しているのです。決して誰かの手に合わせて作られることはありません。食べることができないケーキやアイスクリームも美味しそうに並んで、夢のテーブルは完成します。(もちろん食器として使用できるものも販売されています)
制作のモチベーションがどこから湧くのかをお聞きしたところ、イヴァさんは、自身の子供時代からインスピレーションを受けていると答えてくれました。子供の頃に好きだった『不思議の国のアリス』や『美女と野獣』の世界観を作品に反映しているのだそうです。
私は、遊び心のあるイヴァさんの感性が大好きです! 陶器の概念から解放されて、自分の好きなものを追求して、自分で世界を創り上げていく。子供の頃の創造力を追いかけていくことは、アーティストの永遠のテーマとも言えます。
ベオグラードを訪れた際には、イヴァさんのギャラリーをぜひ訪ねてみてください。夢や希望とともに、新たな価値観に気づかせてくれるでしょう。
【プロフィール/イヴァ・ブルキッチ(Iva Brkić)】1987年ベオグラード市生まれ。ベオグラード応用芸術大学で陶芸を学ぶ。2013年より若手陶芸作家とともに陶器ショップGallery 1250を創立。現在では独立して「Iva Brkić gallery」を運営している。セルビアで人気の陶芸作家。
場所情報
Iva Brkić gallery
住所:Čumićevo sokače 2 lokal 56, Beograd Serbia
【文/古賀 亜希子】写真家。成城大学芸術学科を卒業後、東京綜合写真専門学校にて写真を学ぶ。国内外で作品を発表。2009年、ベオグラードでの個展開催をきっかけにセルビアが大好きになり、セルビアと日本の文化交流展覧会を多数企画。イェレナ・イェレミッチ著『イェレナと学ぶセルビア料理』の企画・翻訳に携わるなど、 最近は専らセルビア料理を研究中!