My Serbia(マイセルビア)

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セルビアで注目のイラストレーター、アンドリヤーナさんが大切にしている価値観【特別インタビュー】

【構成/My Serbia】

絵本・児童書のイラストを手掛けるアンドリヤーナ・ヴァシッチさん。彼女の作品は、アースカラーと言われる優しい色合いと、愛くるしい生物の描写が特徴です。プロのイラストレーターとして、絵を描く上で意識していること、普段の生活で大切にしていること、日本のアニメや映画のことなど、お話をうかがいました。(聞き手/小柳津 千早)

アンドリヤーナさん(画像提供: Rico illustration)
自分らしさを作品で表現する

ーー現在は絵本や児童書のイラストレーターとしてご活躍されていますが、子どもの頃から絵を描くのが好きでしたか?

幼い頃から色鉛筆を握り、紙に絵を描くことが日常でした。おそらく、他の子どもたちも同じだと思います。ただひたすら、紙の上で想像力を働かせ、人物を描くことにいつも夢中でした。それは、高校や大学に進学しても変わりませんでした。

ーーいつ頃からイラストレーターになることを決心したのでしょうか?

大学卒業後、広告代理店のデザイナーとして働いていましたが、仕事以外の時間でも趣味の絵を描き続けていました。そうしているうちにふと「自分は仕事をしている時よりも、絵を自由に描いている時の方がずっと楽しい」ことに気づいたんです。その後、初めて絵本の挿絵の仕事をして、「ああ、私は絵本や児童書のイラストレーターになるんだ」と決心しました。幸運にも、今はイラストレーターとして、多くのプロジェクトに携わることができています。可能性は無限大です。絵本・児童書、商品パッケージ、玩具のイラストのほか、自分のオリジナル商品として、例えばステッカーやポストカードなど、思いついたものを制作しています。

デジタルイラストの作品(画像: Rico illustration)

ーー優しい色使いとキャラクターがとても魅力的ですが、イラストを描く時にどんなことを意識していますか?

登場人物が持つ感情や背景を読者に伝えることを意識しています。あとは、読者の感覚や記憶を呼び覚ましたり、想像力をくすぐったり、心を慰めたり、気持ちの変化を促したいと思っています。以前は、多くの人たちから自分を認めてもらうために、技術を優先し、流行を追いかけることに多くの注意を払っていましたが、長続きしませんでした。自分らしい仕事ができていないことに気づいたんです。

ーー温かみのあるイラストは「自分らしさ」の表れなんですね。絵本の仕事についてうかがいたいのですが、作家とはどのような打ち合わせをするのでしょうか?

すべてはクライアント次第です。出版社から仕事を依頼される場合、ある程度の指示はあるものの、作家さんとあまり接することはありません。一方、作家さんから直接お話しをいただく時は、イラストの構図を一緒に考えることが多いですね。すべて任されることもあります。

絵本は短編映画のようです。原稿から想像を膨らませ、コンテンツを充実させることに注力しています。日頃からインスピレーションを得るために、幼少時代を思い出したり、周りの子どもたちや人々を観察したりしています。

作家のイメージをイラストにする(画像: Rico illustration)
セルビアのイラスト業界の存在感を高めたい

ーー自分の作品に影響を与えた作家はいますか?

高校生と大学生の頃、最も印象的だったのはスペイン出身の画家、サルバドール・ダリでした。キャンバスに描かれた彼の創造性、夢、思考に魅了されていました。先日スペインのフィゲレスにあるダリの美術館を訪れましたが、改めて風変わり人格であることを認識しました。

イラストレーターの中で一人を選ぶのは簡単ではありません。なぜなら、新しい才能を持った人、すでにキャリアを確立した人、すべての人々が私にインスピレーションを与えてくれるからです。

ーーセルビアで注目しているアーティストがいたら教えてください

セルビア国内で影響力を持つイラストレーターと知り合う機会がありました。ボブ・ジヴコヴィッチ(Bob Živković)、アレクサンダル・ゾロティッチ(Aleksandar Zolotić)、マヤ・ヴェセリノヴィッチ(Maja Veselinović)です。ほかにも、私と交友関係がある若いイラストレーターたちがたくさんいます。私はイラスト業界の存在感を高めたいです。もっと交友を広め、お互いに刺激し合い、切磋琢磨したいと思っています。セルビアは小さな国ですが、才能あるアーティストがたくさんいます。

絵本『HEART OF THE CLOUD』のイラスト(画像: Rico illustration)
些細なことが、人生をより美しく、より楽しくさせる

ーー休日の過ごし方を教えてください。普段の生活で大切にしていることはありますか?

天気がよければ、長めの散歩に出かけたり、ハイキングに行ったりします。自然の中でアクティブに過ごし、心に残る新しくて美しい風景を発見するのが好きです。天気が悪い場合は、自分のために何かを描いたり、本を読んだり、大切な人たちとボードゲームをしたりします。

私の心を満たしてくれる小さなことに感謝しています。冬の朝に顔を撫でる太陽、日中に聞くお気に入りの歌、幼少期を思い出す街路の匂い、大好物な料理作り、友人との寄り添い……。飼い犬を撫でて、婚約者と一緒に朝にココアを飲み、家族や友人と同じ時間を共有します。些細なことかもしれませんが、人生をより美しく、より楽しくさせてくれます。

ーー最後に、日本のアニメ、漫画、伝統文化など、興味があることがあれば教えてください

どこから話を始めればいいでしょうか(笑)。私は日本のアニメや映画が大好きで、仕事の合間にもよく見ます。私のお気に入りは、『となりのトトロ』、『かぐや姫の物語』、『おもひでぽろぽろ』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』、『君の名は』、『舞妓さんちのまかないさん』です。もちろん、他にもたくさんあります。

日本の伝統建築も好きです。部屋の間取り、調和した空間、ミニマリズム、温もり。今の私の部屋とは真逆かもしれませんが、そういった方向に進みたいと思っています。家族が大切にされ、人々が尊重されているところは、私たちセルビア人の人生哲学とは異なるという印象を受けました。

もっと日本の文化と料理を知りたいと思っています。ラーメンが好きで、毎月作っています。どこにいても必ず食べなければなりません。いつか日本を訪問して、アニメや映画を通してではなく、実際の目や肌で自然の美しさを堪能したいです。今度、私と婚約者は約3ヶ月かけてアジアを旅行する予定なので、日本に1ヶ月ぐらい滞在できればうれしいですね。

ポストカード、ステッカーなどオリジナル製品も制作しています(画像: Rico illustration)

<了>

「セルビアフェア2024」出展情報

日本セルビア協会主催による「セルビアフェア2024」が10月13日(日)、東京の代官山ヒルサイドテラスで開催されます。My Serbiaのブースでは、アンドリヤーナさんのメッセージカードセット、レターセット、ステッカーが数量限定で販売されます。製品は通常、セルビア国内のみの販売ですが、セルビアフェアのために新たに制作していただきました。この機会にぜひお越しください。

アンドリヤーナさんのオリジナルグッズを販売します(3種類)

メッセージカードセット

アンドリヤーナさんからあなたに送る10のセルフエイドメッセージ。ポジティブになれる励ましの言葉がたくさん詰まっています。

レターセット

ベオグラードのシンボル、聖サヴァ大聖堂の冬限定デザイン。二つ折りカード、封筒、紐のセットです(販売物は水色のカードです)

ステッカー

かわいらしい花と植物のシールセット。手帳やノートなどお気に入りのものに貼って、楽しく彩りましょう。
オリジナル製品はすべて手作りです(画像: Rico illustration)

【プロフィール/アンドリヤーナ・ヴァシッチ】イラストレーター、キャラクターデザイナー。広告代理店でデザイナーとして働いた後、フリーのイラストレーターに転身。セルビア国内外の絵本、児童書、商品パッケージなどのプロジェクトに関わる。デジタルイラストを中心に、アースカラーの明るいパレットを使用するのが特徴。公式サイトはこちら

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