【文/小柳津 千早】
セルビアの自然、文化、日々の日常を自身のYouTubeチャンネル「セルビア暮らしのオヤ」で配信します。これはセルビアに来て一番やりたかったことです。
セルビアでの語学留学から帰国して10数年、初めての東京暮らしはとても刺激的でしたが、時間の経過ととも単調な生活を繰り返していました。子どもが産まれて環境ががらりと変わっても、生活様式は以前と同じまま。週末に近隣の公園やショッピングセンターへ行くことが当たり前になり、それで十分満足していました。
コロナ前は毎年夏に長期の休暇を取り、妻の母国セルビアに行っていました。実家があるアリリェという田舎町はラズベリーの生産で有名です。義兄のラズベリー畑に行き、子どもたちと一緒に収穫を手伝います。意外と重労働なので子どもたちはすぐに飽きてしまいます。でも、自然は最大の遊び場。垣根を走り回り、かくれんぼをします。鶏や羊とたわむれ、裏山できのこを探しに行きます。暑い日は川で遊びます。子どもたちののびのびとした姿を見ながら、次第にセルビア移住を考えるようになりました。
もちろんセルビアでの生活は簡単なことではありません。仕事、子育て、生活習慣の違いなど心配はつきません。でも、私たちにセルビア移住という選択肢があるならそれは幸運なことだし、未来が簡単に予測できない人生の方がきっとおもしろい。変化を恐れて、慎重に歩んできた人生にさよならを告げて、2021年に移住を決断しました。
妻と子どもたちは7月にセルビアに渡航。実家に住み、今後の生き方を模索しながらの生活が始まりました。しかし1ヶ月後、妻に突然仕事のオファーが舞い込み、今まで住んだことがないインジヤという小さな町に引っ越すことが決まりました。子どもたちも9月から地元の小学校(プレスクール)と保育園に通い始めました。私も急きょ、10月中旬に移住することを決心しました。
見知らぬ土地で不安がありましたが、この町の人たちは日本から来た私たちを優しく迎え入れてくれました。お隣さんとの付き合いが始まり、ぶどうやりんごをおすそ分けしてもらい、子どもたちを広大な畑に連れて行ってくれると約束してくれました。学校や保育園では日本から来た子どもということで少しだけ話題になりました。今では週末は郊外に出かけ、自然の中をドライブしたり、農園レストランでおいしいセルビア料理を食べたりして、楽しんでいます。
私のYouTubeチャンネルでは、セルビアでののんびりした生活をご紹介します。現地の人との交流を中心に、セルビアでのありのままの暮らしをご覧いただき、この国の魅力を皆さまに少しでもお伝えできたらうれしいです。
【文/小柳津 千早(おやいず ちはや)】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う学生と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で約350人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半、在日セルビア共和国大使館の通訳として10年間勤務。2021年10月中旬からセルビアに移住。