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レッドスターのセカンドチームを密着取材した日々のこと【セルビア蹴球旅】

【文/石川 美紀子】


今年の夏も、コロナ禍の中ではありましたがセルビアに飛び、1か月ほど滞在していました。今回は、ひょんなことからセルビア・プルヴァリーガ(2部リーグ)のグラフィチャル(RFK Grafičar)というクラブを密着取材した話をさせてください。

グラフィチャル(RFK Grafičar)のボスコ・ジュロヴスキー監督

もともとはベオグラードの老舗クラブだったグラフィチャルですが、2017年からは名門レッドスター・ベオグラードのセカンドチームとして、将来有望な若手選手がレンタルで所属し、試合経験を積むための育成クラブという役割を担っています。現在の監督はボスコ・ジュロヴスキー氏、名古屋グランパスと京都サンガでも監督経験があり、選手時代はレッドスターで長年キャプテンも務めたレジェンドの一人です。名古屋グランパスサポーターの方なら特に、ボスコ監督が若手育成に定評があることはご存じでしょう。所属選手の多くがレッドスターからレンタルで来ている10代の選手というグラフィチャルで、ボスコ監督のミッションは彼らを立派に育ててレッドスターにレンタルバックすること、ということになります。

2021/22シーズン RFK Grafičar(クラブ提供)

ホームスタジアムは、レッドスターのスタジアム敷地内にある人工芝グラウンドを使用していて、毎日のトレーニングもここで行っています。2021/22シーズンの開幕戦は8月8日、私はこの第1節から帰国する直前の第4節まで、アウェイも含めて全ての試合にほぼ公式カメラマンとして帯同するという大変刺激的な経験をしました。

2021/22シーズン セルビアプルヴァリーガ開幕戦

ベンチ前で若い選手たちに大きな声で忙しく指示を送るボスコ監督。ピッチサイドで撮影しながら、日本での監督時代を思い出してとても懐かしい気持ちになりました。ちなみにホームでもアウェイでも日本人女性のカメラマンは目立ちすぎるようで、SNS上であっという間に人物特定されてしまい、試合が終わるとすぐに、対戦相手の選手はもちろんボールボーイやレフェリーからも「俺の写真くれ」というメッセージがじゃんじゃん届きます(笑)。

忙しく指示を送るボスコ監督

キャプテンのルイス・イバニェス。アルゼンチン出身の33歳、クロアチアの名門ディナモ・ザグレブで長年プレーし、2015/16シーズンはレッドスターでもプレーしていたという相当な実績の持ち主です。夫人はクロアチア出身ということもあり、イバニェス自身もセルビア語がとても堪能。若いチームの中で圧倒的な存在感を放つキャプテンで、カメラマンの私への気遣いも欠かさない、とってもジェントルマンな選手です。

ルイス・イバニェス(Luis Ezequiel Ibanez)

最年長は37歳のアレクサンダル・トドロフスキー。元マケドニア代表選手で、同じくマケドニア代表監督も務めていたボスコ監督とは旧知の仲。2018-20までセルビア1部ラドニチュキ・ニシュに所属していて、野間涼太選手ともチームメイトでした(野間選手は現在タジキスタン1部イスティクロルに所属)。野間選手も私も、彼についての印象は、誠実で優しい人格者、ということで一致しています。最近は指導者のライセンス講習も受けているようです。

アレクサンダル・トドロフスキー(Aleksandar Todorovski)

このベテラン2人以外は10代から20代前半の選手ばかりスタメンに並ぶ若いチームで、2部リーグの経験豊富な猛者たち相手になかなか簡単には勝たせてもらえません。開幕して約2か月、8試合を消化した今も順位的には苦戦しています。ただ、ここで勝つためになりふり構わず現実的なサッカーをするのではなく、セカンドチームとしての役割を理解して、一貫性のある育成が必要なことは言うまでもありません。レッドスターのことも知り尽くしたボスコ監督が、日々丁寧な指導を続けています。このチームの若さは最大の武器、シーズンが終わるころには見違えるほど成長していることでしょう。

途中交代でピッチに入る若い選手に気持ちを入れる

この9月の代表ウィークには、U19セルビア代表にグラフィチャルから選手が7人も呼ばれ、代表の親善試合に出場していました。ここで育った選手たちが近い将来レッドスターで活躍し、スペインやイングランドなどの強豪国へ高額オファーで移籍していくのが楽しみです。さらにいつかはセルビアのA代表に呼ばれて、ワールドカップに出場する日も来るかもしれません!

双子のMituljikić兄弟はチームの人気者です

若いチームが、対戦相手の猛者に何度跳ね返されても丁寧につなぐサッカーに挑戦している様子には、未来への可能性ばかりを感じてしまいます。グラフィチャルの試合はセルビア2部リーグで唯一、YouTubeでライブ中継(実況付)があります。皆さんも是非、ボスコ監督のもとで若い選手たちがすくすく育っていく様子を見守ってみませんか。


【文/石川 美紀子】セルビアをはじめバルカン地域を中心に、サッカーと文化とコミュニケーションの関係をリサーチしているフィールドワーカー。もともとの専門は言語哲学だが、本業(大学教員の端くれ)のかたわらインタビュー調査でバルカン諸国をまわり、現地で活動する日本人サッカー選手を取材するようになる。論文やインタビュー記事を書くときは必ず現地に赴くという姿勢を徹底しているため、常に費用対効果が非常に悪いというジレンマを抱えている。

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