My Serbia(マイセルビア)

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セルビア人アーティスト、Vesna Filipovićのデジタルの世界へようこそ!- Vol.2 – 

【文/川端 もと子】

こんにちは!

前回の投稿でVesna Filipovic(ヴェスナ・フィリポヴィッチ)のデジタルアートの世界をお楽しみいただけましたでしょうか? 今回は彼女のクリエイティビティがたくさん詰まった最新作や私たちが今取り組んでいる新しいNFTアートプロジェクトについてご紹介させてください。

最新作のタイトルは「Negai – Make a Wish! – 」

こちらのアートコンセプトはこのバケットハットを被った都会的でクールな女の子がトーキョーを目指すアドベンチャーストーリー。

彼女はチューリップ畑の中にいて(彼女の瞳に映るチューリップに注目してください!)旅を続けた先に見つけたタンポポを吹くとトーキョーが見えてきた!という喜びの瞬間とこれから始まる未来を前にしてワクワクでいっぱいの表情を捉えた一枚です。

彼女の前面に描かれた幾何学的かつ抽象的な模様でチューリップ畑を表現。

イメージとしては時に草むらに埋もれながら決して視界良好な状態ではなく、だからといってシリアスさも感じさせず旅を続けていく姿をVesnaならではの遊び心たっぷりの表現方法で仕上げました。

そして彼女の右側にいるトンボらしき昆虫に注目してください!

前回の投稿でもご紹介したジャンポール・ゴルチエを思わせるようなストライプ柄をまとっているのです。そしてその上に見えるバッテンはどこかで見覚えありませんか?

あの有名なKAWSの代名詞的なバッテンモチーフを取り入れ彼へのちょっとしたオマージュを表現! 細部にまでVesnaのこだわりが詰まっています。

そしてトーキョーを見つけてからこの女の子がどうなったのか気になった私はVesnaに聞いてみたところ、こちらのデジタルアートが届きました!

タイトルは「Tokyo Girl – A Different Corner of Reality」

チューリップ畑でトーキョーの文字を見つけた女の子は不思議な力を味方につけ時空を超え、突如トーキョーのど真ん中に降り立ちました。

ファッショナブルでクールなトーキョーガールに大変身しましたね!

このピンク色のヘアスタイルはソフィア・コッポラの映画「ロスト・イン・トランスレーション」へのオマージュなのです。

トーキョーという大都市を印象づける高層ビル群をミニマムな幾何学的デザインと色使いで再現し、ネオンサインの代わりにステキな日本語をトーキョーの夜空にちりばめました。

人々が夢を叶えるため、あるいは愛を見つけるために大都市を目指すように、トーキョーではそんな夢が叶うというVesnaの隠れたメッセージが込められているのです。

いかがでしたか? この女の子の冒険をお楽しみいただけましたでしょうか? 

デジタルアートは従来のアナログアートとは異なりその制作過程や手法が多彩であることからより多様な世界観やイメージを生み出すことができるのです。

見る人が自分自身の持つ知識や経験、想像力を集結して自分なりのストーリーや世界観を作り出すことができるアートが私が思う魅力的なアートです。

そしてVesnaのデジタルアートには私たちの想像力を刺激する仕掛けがたくさん詰まっているのです。

パーソナルNFTという新しい試み

NFTというワードを聞かれたことはありますか? NFT=Non-Fungible Tokenとは、ブロックチェーンを基盤にして作成された偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータのこと。つまりNFTという所有権をデジタルデータに付与することで従来のデジタルデータには考えられなかった資産価値ををもたらすことになります。日本でもドットアートのクリプトパンクスなどNFTが一時期ブームになりましたよね。

初期の熱狂から醒め、これからはNFTの本質的な部分にフォーカスされていくと言われています。従来のNFTアートって投機目的のごく一部の人たちの間でニーズがあるだけで少なくとも私にはその魅力がさっぱり伝わってこなかったのですけど同じような感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

なんというか、テクノロジーに置いてきぼりにされている感じだったのです。

もっと私たち人間が主役になれるような、あなたが中心となり何かにチャレンジして物事が動く自由で発展的な、テクノロジーに置いてきぼりにされるのではなく、テクノロジーを操るようなNFTアートがあれば新たな可能性が広がるのでは、と思っていました。

そんなとき、Vesnaから今回ご紹介した、「Make a wish!」の一枚が届き、続編として「Tokyo Girl – A Different Corner of Reality」が届いたのです。

彼女のストーリー性溢れるクリエイションを見たとき、この女の子のように自分自身のまだ見ぬ未来の姿をデジタルアートに落とし込み、それをNFT化して自分のウォレットにアイデンティティとして保管すればとても面白いのではないかと思いました。

題して「アーティストと一緒に描くあなたの未来 – あなただけのパーソナルNFTアート – 」

このプロジェクトはあなたが語った今の人生で大切にしていること、将来やりたいこと、あなたが望む未来の姿などを基にVesnaがあなたの未来をイメージした一枚のデジタルアートを制作するという全く新しい取り組みです。

「なりたい自分を見せる」とは「別の世界の体験」であり、新しい生活の一幕となるはずなのです。

NFTはまだまだ未知の世界です。しかし、SNSもかつてはそうでしたよね。

NFTやブロックチェーンのカルチャーに背を向けるのではなく、パーソナルNFTアートがこの世界に想像力を働かせてみるきっかけとなりますように。

ちょっと面白いかも!と思われた方はぜひお問い合わせくださいね。

Akira Art Room : info@akiraartroom.com

Japanese Seriesより

外国人アーティストたちと話していると彼らがいかに日本に敬意を払っているか感じることがよくあります。日本人の礼儀正しさ、誠実さ、日本の自然の美しさ、歴史ある文化。。。時に日本人の私よりも日本について詳しい彼ら。Vesnaもそんなアーティストの一人です。

ここからは彼女が日本人女性に対するオマージュとして描いた「Japanese Series」をご紹介いたします

“AO” from Japan Series 2022年

すべてはつながっているのです。私は彼らの目に花を描き、体に波をあしらい、いつも彼らを照らす太陽を描きたかった。彼らの精神、優美さ、儚さ、礼儀正しさを捉えたかったのです。そして印象的な方法でそれらの強い結びつきを表現しようとしました。

Everything is interconnected. I wanted to see flowers in their eyes, waves in their body, the sun that always shines upon them. I tried capturing their spirit, grace, their fragility, politeness, to a certain extent that brings strong association in almost symbolic way.

Vesna Filipović
“HIKARI” from Japan Series 2023年

日頃から日本の文化、デザイン、建築、シンボリズムを学んでいるVesna.

「Japanese Series」は彼女が実際に学んだ史実に基づいたものと、彼女のイマジネーションから生まれたアイディアで成り立っています。

“AKIRA” from Japan Series 2023年

アート作品は、場所の概念さえも変える力があり、私たちの日々の感情にも影響を与えることがあります。私の「Japanese Series」を通して日本が『日出づる国』であること、そして日本人女性が繊細で類い稀な存在であることを思い出していただけたらと願っています。

An artwork can change the identity of the place and even influence our everyday feelings. I wish that my Japanese series become the constant reminder on the “Land of The Rising Sun” and their delicate and extraordinary women.

Vesna Filipović
“HAYAMI” from Japan Series 2023年

2週にわたりVesna Filipovićのデジタルアートの世界にお付き合いいただきありがとうございました! 私にとって一枚のアートがきっかけで知ることができたセルビア。そしてこの温かいウェブサイト!

もしVesnaのアートに出会っていなかったら私はこの先もずっとセルビアのことをよく知らないまま過ごしていたと思います。

アートが繋ぐ不思議なご縁に感謝しつつ、ひとりでも多くの方にVesnaのデジタルアートの世界を楽しんでいただけることを願ってやみません。


デジタルアーティスト

ベオグラード在住デジタルアーティスト。ベオグラード大学情報システム・技術学科、Eビジネスで2度目の修士号取得。La Maison Digitalでデジタルアーティストとして活躍する傍ら、ファッションエディターとしての顔も持つ。大の親日家。

ギャラリスト

ギャラリスト。商社勤務を経て、2020年に兵庫県芦屋市にアートギャラリーAkira Art Roomを設立。日本ではほとんど知られていない海外の現代アーティスト作品を中心に取り扱う。最近ではセルビアのデジタルアーティストとの出会いにより従来のフィジカルアートに加えてNFTアートのディレクションも始動中。

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