My Serbia(マイセルビア)

セルビアの美・食・住の情報が集まるライフスタイルマガジン

日本セルビア映画祭でVesna Filipovićのデジタルアート展が開催されました

【文/川端 もと子】

セルビアのベオグラードと日本の東京で開催される、映画にフォーカスした二都市文化交流イベント、日本セルビア映画祭が2023年11月8日から12日までベオグラードで開催されました。もとは日本の短編映画を中心にスタートした本映画祭は、時とともに多様なプログラムを提供するに発展し、10周年を迎えた今年はハリウッドよりPeter Webber監督(『真珠の耳飾りの少女』『ハンニバル・ライジング』『終戦のエンペラー』)を迎え、「Trajanje・Lasting・継続」をテーマに現地では大変盛況のうちに閉幕されたようです。

その映画祭期間中の関連プログラムとしてVesna Filipovićのデジタルアート展 – MOTOKO – が11月9日に開催されました。私の名前をタイトルに冠するというVesnaの粋なサプライズつきの本展覧会。セルビアと日本がデジタルアートによってコミュニケーションするという記念すべき最初の一歩となりました。

本展覧会では「LMD Clique」と「Japanese Series」という、2つのシリーズ作品を出展。

ポップアートのアイコンにインスパイアされた一連のデジタル作品シリーズ、「LMD Clique」では、私たちの世界に彩りをもたらし、あらゆる文化的な革命のきっかけと私たちの想像力のフィールドを広げたクリエーターへのオマージュとして、魅力的でミニマルで楽しく、一目でそれとわかる幾何学的なキャラクターの世界を創り出しました。来場者は、フランスの映画監督アニエス・ヴァルダ、ロック界のアイコン、デヴィッド・ボウイ、アメリカのポップアート・アーティスト、アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキア、そして日本の草間彌生などを見ることができました。

「Japanese Series 」は、日本人女性へのオマージュであり、彼女たちの唯一無二な美しさ、文化、精神への賛辞を込めて描かれました。Vesnaが日頃から学んで得た、日本の文化、デザイン、建築、シンボリズムの知識に基づいたものと、彼女の日本に対するイマジネーションから生まれたアイディアで成り立っています。

Yayoi Kusama」(右から二人目)とJapanese Series
Vesna Filipovićと「Negai」
Vesna Filipovićと「Tokyo Girl」

俳優で映画プロデューサーのVukota Brajovićによる展覧会のオープニングスピーチが遠くて近いセルビアと日本の距離をさらにぐっと縮める心温まるものでした。

永遠のインスピレーションとしての日本。そして実際、日出ずる国は常に世界中のクリエイターのイマジネーションに火をつけてきた。

Japan as an eternal inspiration. And indeed, the Land of the Rising Sun has always ignited the imagination of creatives from around the world.

Vukota Brajović

映画界の巨匠黒澤明からファッション界のレジェンド高田賢三、そして現代のポップアートのスーパースター、村上隆に至るまで日本が生んだ各界の偉人たちの功績を称え、Vesnaのクリエイティブな旅に光を灯してきた、と言います。

そして、技術の進歩によるデジタル化の急速な発展の中においても忘れてはならない大切なことを素敵な表現で語ってくれました。

右から「Negai」、「Tokyo Girl」

多くの良質な漫画で描かれているように、強固な鋼の鎧の下には人間性と思いやりを滲ませる心が鼓動しているのだ。

As in any quality manga, behind the powerful metal armor beats a heart that exudes humanity and compassion.

Vukota Brajović

アーティストは人間性を作品で表現します。新しいデジタル文明の創造の最中において、デジタルテクノロジーを用いたアートがその未来にいかに人間性を維持していくか、大きな役割を担う存在になるでしょう。

最後に、この展覧会において、またVesnaの創作活動を通して伝えたいメッセージを会場の皆さまと共有しました。

世界の各地で戦争や紛争が起こるつらい時代にあっても、私たちの中に人類への希望と他者への思いやりがある限り、何も失われることはないということを伝えたいのです。だからこそ、このビビッドな色彩と幾何学模様の渦にただ身を委ね、主人公たちがとてもカワイく、ビッグウェーブが陽気に私たちをサーフィンに誘う、楽観主義に満ちたVesnaの小さな宇宙に浸っていただきたいのです!

It is to awaken in us the feeling that even in these difficult times when the planet is shaken by wars on different meridians, nothing is lost as long as there is hope for humanity and compassion for another human being, no matter how different it may seem to us. That’s why I invite you to simply surrender to this whirlwind of vivid colors and geometric shapes and immerse yourself in Vesna’s universe, a small universe full of optimism in which the main characters are quite kawaii, and the big wave  cheerfully invites us to surf! Enjoy.

Vukota Brajović

9,000キロ離れたセルビアから届いたVesnaのデジタルアート展の模様はいかがでしたか?

私たちが迎えるデジタル社会の未来にアートが存在し、鎧の下にはいつだって人間性と思いやりを忍ばせたテクノロジーの渦なら進んで巻き込まれてみたい!と思うのでした。


デジタルアーティスト

ベオグラード在住デジタルアーティスト。ベオグラード大学情報システム・技術学科、Eビジネスで2度目の修士号取得。La Maison Digitalでデジタルアーティストとして活躍する傍ら、ファッションエディターとしての顔も持つ。大の親日家。

ギャラリスト

ギャラリスト。商社勤務を経て、2020年に兵庫県芦屋市にアートギャラリーAkira Art Roomを設立。日本ではほとんど知られていない海外の現代アーティスト作品を中心に取り扱う。最近ではセルビアのデジタルアーティストとの出会いにより従来のフィジカルアートに加えてNFTアートのディレクションも始動中。

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets