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春の目覚め、命の始まり【セルビア、小さな農場の物語・第4回】

【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ

私たちの農場に、一年で最も明るく、緑にあふれた季節がやってきました。春は、自然が冬の眠りから目覚め、少しずつ命の気配が農村に広がっていく時期です。あたりには、新しいエネルギーや成長、そして始まりを感じさせる香りが満ちていきます。

農村での暮らしにとって、この時期は一年で最も忙しい季節でもあります。毎日の仕事は途切れることがありません。果樹園の手入れや畑の準備が進み、野菜の種まきや植え付けが始まります。さらに動物の世話も加わり、外で過ごす時間は自然と長くなっていきます。

セルビア各地の家庭菜園では、トマト、パプリカ、タマネギ、ジャガイモ、エンドウ豆、インゲン豆、ニンジンが次々と植えられていきます。こうした作業には家族全員が関わり、それぞれの役割を担いながら進められます。豊かで健やかな収穫につなげるためには、適切な時期にひとつひとつの作業を終えることが大切です。

牧草地には若くやわらかな草が広がり、牛や羊は長い冬のあいだ納屋で過ごしたあと、その新しい草を心待ちにしていました。春は新しい命が生まれる季節であり、農場にあたたかな喜びをもたらします。ニワトリやアヒル、ガチョウはこの時期に多くの卵を産み、庭には命の動きが感じられるようになります。


土を耕すトラクターの音があちこちに響き、トウモロコシの種まきが盛んに行われます。秋に収穫されるトウモロコシは、家畜の飼料として欠かせません。

春の森には、特別な魅力があります。スノードロップ(待雪草)、スミレ、シラー(オオツルボ)といった花々が姿を見せ、春の訪れを知らせてくれます。セルビア語で「スレムシュ」と呼ばれるクマニラも見られるようになります。クマニラは3月から5月にかけて採取され、サラダやパイ、スープ、ムサカ(じゃがいもとひき肉のオーブン焼き)などの料理に使われます。さわやかな味わいに加えて、体内の浄化を助け、血圧を整える働きがあるとされ、健康にもよい食材として親しまれています。

スミレ
クマニラ

農村の春は、単なる季節の移り変わりではありません。すべてが目覚め、成長し、再び動き出す季節です。忙しさのなかにも小さな喜びが重なり、日々の暮らしにやわらかな彩りが広がっていきます。

(訳/小柳津 千早)


【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】絵本作家。自身の本を通して、子どもたちに農村生活、民俗行事、伝統、家族の価値観を伝える。2024年5月にセルビアの農場の一日を描いた初の書籍『One day on the farm』を出版し、翌年にセルビア児童文学界で最も権威がある「ドシテイのペン」賞を受賞した。ほかにも、農場の四季をテーマにしたシリーズ本も刊行。書店でのワークショップを多数開催している。

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