【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】
復活祭(イースター)は、セルビアにおいて最も重要なキリスト教の祝祭のひとつです。この日は神の子イエス・キリストの復活を記念し、命が死に打ち勝つことを象徴するとともに、信仰と希望、そして新たな始まりをもたらすものとされています。
農村では今でも、復活祭は昔ながらの形で大切に祝われています。世代から世代へと受け継がれ、この祝祭は必ず日曜日に行われます。
復活祭の二日前にあたる「聖大金曜日」は、とりわけ重要な日とされています。イエス・キリストの受難をしのび、農村では穏やかに一日が過ぎていきます。
そしてこの日から、復活祭ならではの美しい習慣が始まります。卵の色付けです。

セルビアの村では、卵を自然の素材で染め上げます。最もよく使われるのはタマネギの皮で、あたたかみのある赤茶色に染まります。そのほかにも、ターメリックで黄色、紫キャベツで青、ハイビスカスティーで深い赤、緑茶でやさしい緑を出すなど、身近な素材が用いられています。



ほかにも、古くから伝わる特別な装飾方法として、ろう(蝋)を使った模様描きがあります。溶かしたろうをペンのような木製の道具で、花や十字、線、伝統的な模様を描きます。染色後にろうを取り除くと、美しい模様が浮かび上がります。



最初に赤く染めた卵は「チュヴァル・クーチャ(家を守るもの)」と呼ばれ、一年を通して家や家族を見守ります。赤色はキリストが流した血を象徴しています。

復活祭当日には家族が集まり、このあいさつで一日が始まります。
「キリストは復活された!」
「まことに復活された!」
また、「卵たたき」と呼ばれる習慣もよく知られています。家族や客人が卵を打ち合わせて、どれが一番固いかを競います。特に子どもたちにとっては楽しいひとときで、笑顔があふれます。

食卓には、祝祭らしい料理が並びます。断食や節制を行う「斎(ものいみ)」の期間が終わり、伝統的な料理や自家製のパン、肉料理、焼き菓子などが用意されます。

自然とともに暮らす農村では、この祝祭はより深い意味を持ちます。春の訪れ、芽吹き、そして命の誕生。そのすべてが、復活祭のメッセージと静かに重なり合っています。
(訳/小柳津 千早)
【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】絵本作家。自身の本を通して、子どもたちに農村生活、民俗行事、伝統、家族の価値観を伝える。2024年5月にセルビアの農場の一日を描いた初の書籍『One day on the farm』を出版し、翌年にセルビア児童文学界で最も権威がある「ドシテイのペン」賞を受賞した。ほかにも、農場の四季をテーマにしたシリーズ本も刊行。書店でのワークショップを多数開催している。


