【文/古賀 亜希子】
写真家の長見有方さんの作品は、第4回目のMy Serbia Galleryでご紹介したベオグラードの写真のように、旅先ではスナップ感覚で撮影を楽しむことが多いです。先日、長見さんが2007年にセルビアで撮影した作品を拝見する機会がありました。その中で私が特に気になったのはヴォイヴォディナ(Vojvodina)自治州にあるソンボル (Sombor) の街並みでした。
長見さんは2007年9月にソンボルを訪問し、市内のラザ・コスティッチ図書館で行われた「日本文化週間」の一環として自身の写真展を開催しました。私が見た写真はソンボル滞在中に撮られたものでした。
「日本文化週間」では写真展以外に、音楽会、俳句の会、折り紙教室、長見さんの父親で小説家である長見義三さんの著書『ちとせのウエペケレ』(※ウエペケレはアイヌ語で説話、民話という意味)のハンガリー語訳本出版記念会も開催されました。なぜハンガリー語なのかというと、 ソンボルにはハンガリー人が多く住んでいるからです。ヴォイヴォディナはそもそもセルビア人のほか、ハンガリー人、スロバキア人、クロアチア人らが混住し、独特の文化を形成する興味深い地域。 以前My Serbiaに登場した日本在住のタマラ・ツヴィエティチャニンさんもヴォイヴォディナ出身で、故郷の食文化に関する記事や郷土料理を披露してくれたTiki’s kitchenでは文化や習慣の違いを紹介してくれました。出版記念会では本の朗読も行われ、地元の劇団員がハンガリー語で、長見さんの友人でセルビア語翻訳家の山崎洋さんが日本語で朗読しました。
今回ギャラリーでご紹介する写真には、長見さんがソンボルの街を歩きながら写真撮影を楽しんだ様子が記録されています。当時、市内はメインストリートの再開発で街路樹が取り替えの最中だったとのこと。写真からもその様子がよく伝わります。長見さんは「街路樹が育ったソンボルの街をもう一度訪ねてみたい」と話していました。
さあ、皆さんも一緒にソンボルの街歩きを始めましょう。ドナウ川周辺の初秋ののんびりした空気を味わってみてください。
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【文/古賀 亜希子】写真家。成城大学芸術学科を卒業後、東京綜合写真専門学校にて写真を学ぶ。国内外で作品を発表。2009年、ベオグラードでの個展開催をきっかけにセルビアが大好きになり、セルビアと日本の文化交流展覧会を多数企画。イェレナ・イェレミッチ著『イェレナと学ぶセルビア料理』の企画・翻訳に携わるなど、 最近は専らセルビア料理を研究中!