【文/古賀 亜希子】
セルビアから、日本で作品を紹介したいと連絡がくることは、嬉しいものです。
今回My Serbiaに連絡をくださったのは、様々な要素を取り込みながら一つの芸術を完成させるアーティスト、ユリヤ・カステルッチ(Julija Castellucci)さん。
「H O R I Z O N T A L」と題された作品は、パフォーマンス作品です。何もない空間に、ユリヤさんが寝そべり、歌います。アカペラで歌うのは、熊本県に伝わる民謡「五木の子守唄」。
鑑賞者は一人ずつその空間へ通され、ずっと歌を聴いているか、その場を去るかその選択を委ねられます。一人の訪問者が去ると、新たな鑑賞者が入ってきて、ユリヤさんは最初から歌い始めます。実際に、ユリヤさんは3時間ものパフォーマンスの中で、鑑賞者に止まることなく歌を歌い続けます。
この作品には、「人は行動を選択できる」というメッセージが含まれています。本来私たちは、誰からも管理をされず、自らの意思で物事を決定することができる。そんなメッセージをこの作品の中で受け取り、体験します。
最後に、ユリヤさんになぜ「五木の子守唄」を選んだのか聞いてみたところ、思いがけない答えが返ってきました。
「夢で見たから。このパフォーマンスは、夢で見たものを再現している」。
ユリアさんの夢のようなパフォーマンス、ぜひご覧ください。
【プロフィール/ユリヤ・カステルッチ】1993年生まれ。コンセプチュアル・パフォーマンス・アーティスト。現在ベオグラードとスコピエ(北マケドニア)を拠点に活動している。パフォーマンスにビデオやインスタレーションの要素を加えて一つの空間芸術として完成させる。そのスタイルは、音の彫刻とも言え、ユーモアと風刺を取り入れたテーマ性の高いアート作品である。美しい歌声は多くの人々を魅了する。
【文/古賀 亜希子】写真家。成城大学芸術学科を卒業後、東京綜合写真専門学校にて写真を学ぶ。国内外で作品を発表。2009年、ベオグラードでの個展開催をきっかけにセルビアが大好きになり、セルビアと日本の文化交流展覧会を多数企画。イェレナ・イェレミッチ著『イェレナと学ぶセルビア料理』の企画・翻訳に携わるなど、 最近は専らセルビア料理を研究中!