5月31日と6月1日に大阪城ホールで開催された「Osaka International Art」。国際的なアートフェアに、セルビア共和国を代表して、X Vitamin Gallery(ベオグラード)とBel Art Gallery(ノヴィ・サド)が参加しました。X Vitamin Galleryの代表であるクセニヤ・マリンコヴィッチ氏は、2007年から日本とセルビアの文化交流展覧会を企画しており、3度目の来日となりました。今回は、昨年から同ギャラリーでアシスタントを務めているNaoちゃんも一緒に来日。セルビアの旬のアートを集めたブースから、Naoちゃんがレポートを届けてくれました。

【文/Nao】
セルビアは今回初めて、「大阪国際アートフェア2025」において、1つではなく2つのギャラリーが共同で出展する機会を得ました。セルビア現代アートシーンを代表する2つのブースの出展は、日本大使館による支援によって実現しました。X Vitamin Galleryのディレクター、クセニヤ・マリンコヴィッチ氏とBel Art Galleryのディレクター、ヴェスナ・ラティノヴィッチ氏による協力のもと、合計7名のアーティストが出品しました。

X Vitamin Galleryから参加のアーティスト:
ドラゴリュブ・ラシャ・トドシイェヴィッチ(故人)Dragoljub Raša Todosijević
ミハエル・ミルノヴィッチ Mihael Milunović(※以下リンク先はInstagram)
マリーナ・マルコヴィッチ Marina Marković
ミロラド・ミチャ・スタイチッチ Milorad Mića Stajčić
イレーナ・コヴァチュ Irena Kovač
Bel Art Galleryから参加のアーティスト:
エディタ・カディリッチ Edita Kadirić
クリスティーナ・ピルコヴィッチ Kristina Pirković
2024年9月5日から10月28日まで開催されたX Vitamin Galleryでの展覧会「Great Fantasy」に続き、ドラゴリュブ・ラシャ・トドシイェヴィッチの作品を再びご覧いただける機会となりました。今回の展示には、1990年代の作品もいくつか含まれており、挑発と繊細な象徴性を通して、社会と政治への警告を表す、小さめの抽象水彩画が並びます。

ミハエル・ミルノヴィッチとマリーナ・マルコヴィッチは、このイベントのために新作を制作しました。ミハエルは日本の神話を研究し、その物語に基づいて、小さめのフォーマットに動物のモチーフを描きました。作品の神秘性を高める同様の配色を用いています。

マリーナは今回も、小さなフォーマットの中でその才能を存分に発揮しています。最近では、2024年10月に開催されたSalon MSUのパフォーマンスにも参加しましたが、今回の作品でも「芸術における女性」という一貫したテーマーーすなわち、男性が女性をどのように見ているかーーが、彼女のトレードマークであるピンク色を用いて表現されています。このグロテスクで下品さを帯びた表現は、Bel Art Galleryに所属する女性アーティスト、エディタやクリスティーナの作品とも、ある種のつながりを見せていると言えるでしょう。

エディタの作品はややシンプルな構成で、主に異常な身体的状態にある女性を描いています。表情は穏やかですが、描かれている状態は不穏です。

クリスティーナも同様で、シュールな構成におけるナレーションと暗い色彩を通して、深く神秘的で暗い印象を与えますが、衝撃的でも恐ろしいものでもありません。両アーティストとも、表面からは見えない、深く隠された内なる不安や恐怖の感情を描き出しています。

一方、ミチャの作品は他の作家とはまったく異なるアプローチをとっていますが、彼が持つ子どもらしさや遊び心、そして子ども向け漫画へのノスタルジーは、唯一無二の魅力を放っています。彼の作品は常にあらゆる世代の観客の関心を惹きつけ、鮮やかな色彩もその魅力を一層引き立てています。X Vitamin Galleryの共同創設者でもあるミチャは、今回の展示では小さめの彫刻作品に焦点をあて、そのスケールの中に豊かな感情を凝縮させ、観る者に深い感動を与えています。

イレーナもこの機会にインスタレーション作品を準備しました。彼女はテキスタイルに手描きのドローイングを施し、まるでプリントされたグラフィックのように見える作品を仕上げました。彼女は様々な色彩と形式を用い、それぞれが全く異なる、個性的なモチーフで人々の目を惹きつけています。動物や人物の表現は、作品のあいだに設けられた小さな台座の上に置かれた、古いゴム製のおもちゃによって構成されています。


フェアは大阪城ホールで開催され、世界各国から113のギャラリーと、100名を超えるアーティストが参加しました。
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※次ページで英語訳・セルビア語訳を掲載しています
【文/Nao】セルビア・ベオグラード在住。母は大阪出身の日本人、父はセルビア人の家庭に生まれる。 ベオグラード大学哲学部にて美術史を専攻。ベオグラード現代美術館(MSUB)にてボランティア活動および勤務を経て、現在は現代美術を専門とする「X Vitamin Gallery」で働く。