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チューミッチというオルタナティヴマーケット(後編)【ベオグラードアート通信・第15回】

【文/山崎 佳夏子】

【中編】ではチューミッチの歴史を紹介したが、一度廃墟となった場所がアーティストたちの力でまた再生したのは希望のある話だ。アパレル系ショップが最も多いが、アート通信らしく【後編】では美術作品を取り扱うギャラリーを三つ紹介したいと思う。

Camera Obscura

Camera Obscuraはセルビアの写真家オリヴェラ・インジッチ(Olivera Inđić)が営むベオグラードで珍しい写真専門のギャラリー。オリヴェラは1981年ベオグラード生まれ。ベオグラード美術大学で絵画を学び、現在は写真をメインに発表している。国内、ヨーロッパ以外にもアジアでの展示経験も豊富で、彼女の作品にはそのことを感じさせる旅人的な視線がある。店内は彼女の作品の他にも、友人の写真家の作品も展示、販売されている。

チューミッチはアートコミューン的なところがあると語るオリヴェラさん
Stena

マヤ・ヴチッチ(Maja Vučić)、サーニャ・トマシェヴィッチ(Sanja Tomašević)、タティヤナ・トライコヴィッチ(Tatijana Trajković)の三人のアーティストが開いたStena(ステーナ。意味は「岩」)は、美術と日用品の垣根を超えるギャラリーだ。マヤは陶芸でカップやアクセサリーを作り、彫刻家のサーニャはそのセンスを生かしたアクセサリーを制作している。グラフィック作家であるタティヤナは、制作のほかに自身のスタジオでコラージュセラピーのワークショップも行っている。三人の作品の他にもStenaでは、セルビアの女性アーティストの洋服や小物、写真作品など、ジャンルレスな作品を販売している。

この日お店で働いていたミナ・ジョルジェヴィッチ(Mina Đorđević)さんはイラストレーターで、Stenaでは彼女のZineを販売している。
Wunderkammer

Wunderkammerはヨーロッパや国内のアンティーク品と共にセルビアの若手アーティストのイラストレーション作品などを販売するギャラリーだ。プリントやポストカードなど、手に入れやすいものが多く、プレゼントを探すのに最適の場所だ。国内の有名なストリートアーティストのバルバラ・ディミッチ(Barbara Dimić)やMarvのプリントや、詩とドローイングを組み合わせた作品で人気のオグニェン・ミラノヴィッチ(Ognjen Milanović)の作品もここで手に入れることができる。

雑多な店内ではまるでアンティーク品を探すようにお気に入りの一枚を探すことができる

これらのギャラリーの他、チューミッチには古賀亜希子さんのセルビア・アトリエ訪問記第一回で紹介された陶器アーティストのイヴァ・ブルキッチのギャラリーや、ミュージシャンとして今年九州でツアーしたばかりのイゴル・スタングリツキー(Igor Stangliczky) の陶器作品を取り扱うGallery1250もある。

チューミッチは、ベオグラードのサブカルチャーが一挙に見れる場所だ。週末の夜はDJイベントをやるギャラリーやショップもあり、アーティストたちのジャンルを超えた自由な表現と交流の場となっている。

できれば実際にこの場所を訪れてもらうのが一番だが、ここのほとんどのショップ、アーティストはInstagramを使って活動を公開しているので、実際に行くことができなくともここにどんなものがあるのか見ることができるし、アーティストへ反応することもできる。それぞれの形でこのベオグラードのオルタナティヴなマーケットをぜひ体感して欲しい。 

場所情報

Belgrade Design District

住所: Čumićevo Sokaće, Beograd 11000


【文/山崎 佳夏子】美術史研究家。ベオグラード在住。岡山大学大学院在籍中に1年半ベオグラードへ留学し、セルビアの近代美術の研究をする。主な著作に『スロヴェニアを知るための60章』(共著、明石書店、2017年)、『ボスニア・ヘルツェゴヴィナを知るための60章』(共著、明石書店、2019年)(共に美術の章の担当)。