【構成/My Serbia】
セルビア北東部の町ヴルシャツから、日本文化を発信し続けている団体がある。セルビア日本友好協会「Hanami」(花見)だ。文化、芸術、スポーツなど多彩な分野で日本とセルビアをつなぎ、2025年にはその功績が評価され外務大臣表彰を受賞した。団体を率いるアドリヤナ・バルシさんに、これまでの活動や日本との出会い、そして今後の展望について話を聞いた。(聞き手/My Serbia – ティヤナ)

ーーアドリヤナさんが代表を務めるセルビア日本友好協会「Hanami」は昨年7月、日本とセルビアの相互理解の促進への貢献が評価され、外務大臣表彰という名誉ある賞を受賞しました。同年12月には在セルビア日本国大使館で伝達式が行われ、今村朗大使(当時)より表彰状が授与されました。この受賞は、個人として、また協会にとってどのような意味を持ちますか?
お祝いのお言葉をありがとうございます。今回の受賞は、Hanamiを支えるメンバーの一人ひとり、そして日本とセルビアで日々協力してくださっている多くの方々の長年の努力と継続的な活動の成果だと感じています。私たちのプロジェクトや行事は年々増え、内容や質の面でも着実に発展してきました。
在セルビア日本国大使館からは常に大きなご支援をいただいており、文化活動や日本人アーティストの招聘なども多くの場合、共同で実施しています。高い基準を持つ日本という国からこのような表彰をいただけたことは、私個人にとっても、これまでの歩みが公式に評価された証だと感じています。伝達式で今村大使が述べられた「本表彰は、日本とセルビアを結ぶ長年の尽力に対する日本政府からの敬意と感謝の表れです。その活動と尽きることのない情熱に深く感銘を受けています」というお言葉が、その意味をよく表していると思います。

ーー協会設立のきっかけと、現在の会員数、そして活動内容について教えてください
実は、以前スポーツチャンバラをやっていました。日本発祥のスポーツで、競技を通して日本との縁も深まっていきました。競技者としてのキャリアの終盤、世界選手権でメダルを獲得して日本から帰国する途中、自分の中にまだ多くのエネルギーと意欲があることに気づいたのです。そのエネルギーを、今度はスポーツだけでなく文化活動にも向けていこうと思いました。
協会は当初、数十名で始まりましたが、現在は数百名のアクティブ会員がいます。活動はヴルシャツ市内から始まりましたが、ここ5年間はセルビア全土へと広がっています。初期の代表的な行事は「日本の日」で、折り紙、書道、コスプレ、茶道、日本映画、日本語講座、ビデオゲーム、浮世絵、日本舞踊、日本文学、日本のスポーツなど、多彩なワークショップや講演を通して日本を紹介しました。その後、より専門的で高度なプログラムへと発展し、日本の芸術家や教授の方々が定期的に来訪するようになりました。

ーーセルビアには日本との友好協会がいくつかありますが、その中でもHanamiは特に活発に活動している団体のように見えます。今ではヴルシャツは「セルビアにおける日本文化とスポーツの中心地」とも言われています。日本語教室、折り紙や太鼓のワークショップ、日本人アーティストやスポーツ選手の招へい、文学イベントや展覧会など活動は多岐に渡ります。その中で、特に誇りに思っている取り組みは何でしょうか?
どれか一つを挙げるのは本当に難しいですね。どの活動にも、私たちはその時できる最大限の力を注いできました。活動を始めた頃の「最大限」は、今ではほとんど日常的に行っていることになっています。だからこそ、日本に関心を持つ新しい団体の可能性も理解できますし、そうした団体が成長していくのを喜んで応援しています。
私たちの活動の中で特に印象深いのは、コロナ禍に創刊した初のセルビア・日本オンライン新聞『Hanami』、ベオグラード・フィルハーモニー管弦楽団およびコララツ財団で開催した日本セルビア・ピアノフェスティバル、そして何よりヴルシャツ出身の劇作家ヨヴァン・ステリヤ・ポポヴィッチ(1806 – 1856)の戯曲『お高くとまったひょうたん』(原題:Pokondirena tikva)の日本語版出版です。この本にはセルビアのことわざも掲載されており、グラチャニツァにあるコソボ・メトヒヤ国立民族歌舞団「ヴェナツ」と協力して制作しました。
また、子どもたちと一緒に折り鶴を作る活動にも力を入れてきました。子どもたちが折った1000羽の鶴で、日本の国旗を作ったこともあります。日本には「千羽鶴」を折ると願いがかなうという言い伝えがありますが、私たちの願いは、Hanamiが今のような形で成長し活動を続けていくことでした。

ーー大阪・関西万博のセルビアのナショナルデーに合わせて、『お高くとまったひょうたん』日本語版のプロモーションイベントが開催されましたね
セルビアでは近年、「EXPO」という言葉が以前にも増して使われるようになっています。来年、セルビアで万博が開催されることもあり、日本での出版プロモーションは数か月前から準備を進めてきました。セルビア国民・国家財団の皆さんと協力し、Hanamiとの共同出版という形で実現しました。
セルビアのナショナルデー当日には、セルビア館を訪れた多くの来賓に書籍を贈呈し、セルビアの伝統的なモチーフやことわざを紹介する記念品も配布しました。会場には日本各地から学生や教授、俳優、外交関係者、文化・スポーツ分野の方々が集まり、温かく知的な雰囲気の中でイベントが行われました。
作品は日本の皆さまから大変好意的に受け止められました。帰国後には、当時の衣装に関する問い合わせや演出案、さらにはセルビアと日本の伝統的・現代的なスタイルを融合させた舞台化の提案なども寄せられています。この作品は、虚栄やスノビズム、表面的な教養、そしてアイデンティティの喪失といった普遍的なテーマを扱っており、時代を超えて共感を呼ぶ内容です。10月下旬に開催されたベオグラード国際ブックフェアでも作品を紹介し、日本文化をテーマにした展示とともに多くの来場者にご覧いただきました。現在も日本各地で本が読まれ、研究や上演の可能性について関心が寄せられています。
今後はセルビア国内でも日本との友好団体がある都市を中心にプロモーションを続けていく予定です。セルビア文学の古典が日本語で紹介されることは、両国の文化交流にとって大きな意味があると感じています。

ーーアドリヤナさんは現役時代の経験を生かし、スポーツチャンバラの指導者としても活躍されています。昨年12月には世界選手権に出場したセルビア代表チームとともに日本を訪問されました。大会の結果や、この競技のセルビアでの広がりについて教えてください
大会では歴史的な成果を収め、合計4つのメダルを獲得しました。シニアで1つ、ジュニアで2つ、そして特に誇りに思っているのがカデット女子部門でのメダルです。セルビア代表はこれまでにも日本で開催された世界選手権(2015年、2017年)でメダルを獲得しており、今回を含めて合計6個のメダルとなりました。
スポーツチャンバラは決して大衆的なスポーツではありませんが、努力と献身が確かな成果につながる競技だと思います。セルビアではまだ珍しく、用具も日本からしか購入できないため、私たちにとっては決して安いものではありません。そのため競技者は多くありませんが、その分、挑戦する価値のある分野だと感じています。
私たちはセルビア剣道連盟に所属しており、連盟には剣道、居合道、そしてスポーツチャンバラの3つの種目があります。これらが一体となって、日本の剣術文化の魅力を伝えながら、連盟の活動をより強く、そして広く知られるものにしています。伝統や型を重視する人、試合での戦いに魅力を感じる人、あるいは現代的なスポーツとして楽しみたい人など、関心はさまざまです。私たちの組織では、それぞれの興味や志向に合わせて取り組める環境を提供しています。最近では「サムライ」「武士道」「刀」といった概念が一般の人々の間にも広まり、日本文化への関心の高まりとともに、このようなスポーツにも少しずつ注目が集まっていると感じています。

ーー今後の計画について教えてください
現在計画している取り組みのひとつは、舞台作品『お高くとまったひょうたん』を日本語で準備し、上演することです。日本とセルビアの両国で盛大な初演が実現することを期待しています。また、今年はベオグラード大学言語学部日本語学科創設50周年にあたる年でもあり、それに合わせてさまざまな企画を予定しています。さらに、「ヴルシャツ日本スポーツ文化センター」の建設を引き続き進め、施設の整備も行っていく予定です。
そして、2027年のベオグラード万博に向けても、日本のパートナーとともに大規模なプロジェクトや一連のプログラムを準備しています。詳細については近いうちに発表する予定です。
ーー最後に、My Serbiaの読者へメッセージをお願いします
「一期一会」。私たちはこの言葉を大切にし、その精神を本当に信じて活動しています。ですから、My Serbiaでこのようなインタビューの機会をいただいたことに心から感謝いたします。そして、日本でセルビアの魅力を発信するために尽力されている皆さまの活動と努力に、深い敬意を表したいと思います。My Serbiaの読者の皆さまには、これからもぜひMy SerbiaとHanamiのファンでいていただければ嬉しいです。日本とセルビアという、私たちが愛する二つの国をさらに強く結びつけるために、今後も多くの共同活動が生まれると信じています。
【プロフィール/セルビア日本友好協会 Hanami 】セルビア・ヴルシャツを拠点に、日本とセルビアの文化交流を目的として活動する団体。設立以来、日本文化イベントや講演会、ワークショップ、芸術プログラムなどを多数開催。長年の取り組みが評価され、2025年には日本国外務大臣表彰を受賞した。

