【構成/My Serbia】
姉・関谷まりさん(ヴァイオリン)と妹・関谷真由さん(ピアノ)によるユニット「セキシス」(Sekisis)。姉妹ならではの息の合った演奏を生かし、コンサートやイベントなど幅広く活動を展開している。二人とバルカン半島地域とのつながりが生まれたきっかけは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ南部の街・トレビニェでの音楽祭だった。美しい街並みと豊かな自然に囲まれた場所でのパフォーマンスや現地の人々との交流は、二人にとって忘れられない思い出となった。
今年3月には、駐日セルビア共和国大使館で開催されたコンサートに出演。セルビアの音楽や文化に触れ、その関心をいっそう深めている。活動の原点からトレビニェでの経験、セルビアとの関わり、そして今後の活動について話を聞いた。(聞き手/My Serbia – 小柳津 千早)

姉妹だからこそ生まれる、ひとつの音楽
ーーまずは、お二人が楽器を始めた頃のお話から聞かせてください。それぞれ、ヴァイオリンとピアノを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
まり:母がもともと音楽やヴァイオリンが好きで、3歳のときにヴァイオリン教室へ連れて行ってもらったことがきっかけです。
真由: 最初に始めたのはヴァイオリンでした。その後、6歳の頃からピアノを始めました。母がピアノの先生だったので、ピアノを習えば一緒に過ごす時間が増えると思ったことがきっかけです。
ーー幼い頃から姉妹で音楽に親しんできたんですね。現在は姉妹ユニット「セキシス」として活動されていますが、姉妹で演奏する良さはどんなところにありますか?
まり:音楽に対する解釈が似ていて、息遣いも自然と合います。二人で合わせていても、まるで一人で弾いているような一体感があります。そうした感覚を自然に共有できるのは、姉妹ならではだと思います。
ーーセキシスとして、コンサートやイベントなどで活動されています。今年7月には、名古屋の宗次ホールで開催された名曲コンサート「あの日にかえりたい」に出演されました。どのようなコンサートでしたか?
まり:演奏の合間に、フリーアナウンサーの小堀勝啓さんがフォークソングにまつわる思い出の作文を朗読するという、少しユニークな形式のコンサートでした。私たちはクラシックを中心に、アンコールやロビーではフォークソングも披露しました。普段とはまた違った雰囲気のステージで、とても心に残っています。

海を越えて広がった世界
ーー初めて海外の舞台に立ったのが、昨年8月に訪れたボスニア・ヘルツェゴヴィナ南部の街トレビニェでした。セルビア人ピアニスト、タティヤナ・ランコヴィッチさんが主催する国際音楽祭「Music & More SummerFest」に参加し、約10日間の滞在中にはマスタークラスで指導を受け、コンサートにも出演されています。トレビニェを訪れることになったきっかけを教えてください。
真由: 小学生の頃から、年に一度来日されるエストニア出身のピアニスト、アルボ・ヴァルドマ先生のレッスンを受けていました。ヴァルドマ先生は旧ユーゴスラビアとの縁も深く、ベオグラード芸術大学音楽学部でピアノ科の教授を務められた方です。「Music & More SummerFest」ではマスタークラスの講師を務めており、先生を通じてこの音楽祭のことを知りました。
実際に参加するきっかけをつくってくださったのが、国際ピアノ指導者連盟(WPTA)日本支部代表の福田里香先生です。福田先生もこの音楽祭に参加されていて、そのご縁で私たちもオーディションを受けることになりました。ピアノだけでなく弦楽器の参加枠もあったので、「それなら姉妹で参加しよう」と二人でオーディションに挑戦しました。無事に合格し、姉妹でトレビニェ行きが決まりました。

ーー滞在中、特に心に残っている出来事や、現地の方々との交流があれば教えてください。
まり:音楽祭には世界各国から同世代のアーティストが集まっていました。同じ志を持つ仲間と時間を共にし、互いの表現に触れられたことは大きな刺激になりました。
英語やボスニア語でコミュニケーションを取ることは簡単ではありませんでしたが、ホテルの方や現地で出会った皆さんは、日本語を覚えようとしてくれるなど、とてもフレンドリーでした。言葉が十分に通じなくても、音楽を通して自然と距離が縮まっていくのを感じました。
屋外で披露する場もあり、周囲の景色が本当に美しく、「こんな場所で演奏できることは、この先またあるのかな」と思うほど特別な経験になりました。終演後には「良かったよ」とたくさん声をかけていただいたことも嬉しかったです。
また、ステージの前後もとても和やかで、温かい雰囲気がありました。日本では本番前になると緊張感のある空気になることも多いのですが、トレビニェでは、皆さんがもっと自然体で音楽を楽しんでいるようでした。
世界各国のアーティストと交流したことは、私たちにとってかけがえのない財産となりました。自分たちの活動に対する考え方や向き合い方にも、新たな視点を与えてくれたように思います。


ーートレビニェでは、街そのものについてもさまざまな発見があったと思います。初めて訪れて、街の雰囲気や人々についてどのように感じましたか?
真由:旧市街が、まるで絵本の中の情景でした。自然も豊かで、街並みや空も本当にきれいで、実際にそこにいるのに、どこか物語の世界に入り込んだような感覚がありました。
夜になると街は賑やかになり、カフェでゆっくりと時間を過ごしている人がたくさんいました。人との交流や、その場で流れる時間そのものを楽しんでいるようで、日本のせわしない日常とは違う、ゆったりとした温かな雰囲気がとても新鮮でした。街の中に音楽が自然に溶け込んでいて、現地の皆さんにとって、とても身近な存在なのだと強く実感しました。

セルビアとの縁
ーートレビニェでの音楽祭への参加をきっかけに、セルビアとの縁も広がっていきます。今年3月には、駐日セルビア共和国大使館で開催された「セルビア音楽との出会い」コンサートに出演されました。
まり:大使館という特別な場所で演奏する機会はめったにないので、とても貴重な経験でした。なかでも印象に残っているのは、イタリアの作曲家ヴィットーリオ・モンティの「チャルダッシュ」です。お客様に心から楽しんでいただけるよう、演出やパフォーマンスを取り入れました。セルビア出身の著名なヴァイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチさんがよく演奏している作品ということもあり、お客様にも親しみを持って楽しんでいただけたことが、とても嬉しかったです。
ーーほかにも、セルビアの作曲家イシドル・バイッチ(1878~1915)の代表作の一つ「夢」を披露されました。実際に演奏してみて、どのような特徴を感じましたか?
真由:「夢」は、哀愁を帯びた美しいメロディーが心に残る曲です。特に、使われている和音やメロディーの跳躍の仕方など、これまで取り組んできた作品とは異なる部分があり、とても興味深かったです。実際に弾いてみて、それまで知らなかったセルビアの作品を知ることができ、もっといろいろな曲に触れてみたいと思いました。
また、コンサートではセルビアの食文化や歴史にも触れ、国そのものへの興味もさらに深まりました。最後には、「大使奨励賞」の楯と記念品も授与していただき、とても光栄でした。

ーーセルビアでは毎年さまざまなクラシック音楽祭が開催されています。また、2027年には首都ベオグラードでEXPOが開催され、日本館も出展予定です。今後、日本とセルビアの文化交流がさらに広がっていく中で、いつかセルビアで公演してみたいという思いはありますか?
まり:はい、その気持ちは強いです。今回のコンサートを通してセルビアの作品にも触れ、もっといろいろな曲に挑戦してみたいと思うようになりました。いつか実際にセルビアを訪れ、現地の皆さんの前で演奏できる日を心から楽しみにしています。私たちの活動が少しでも日本とセルビアの文化交流につながれば、とても嬉しく思います。
ーー最後に、これからセキシスとして挑戦していきたいことを教えてください。
真由:最近はSNSに力を入れていて、新たにセキシスの公式サイトとYouTubeチャンネルを開設しました。InstagramやTikTokでも活動を発信しながら、私たちのことをより多くの方に知っていただき、音楽を聴いていただける機会を増やしていきたいと思っています。曲もクラシックだけにこだわらず、邦楽やゲーム、アニメの楽曲など、さまざまなジャンルに挑戦していく予定です。ピアノとヴァイオリンという私たちらしいスタイルを大切にしながら、多くの方に楽しんでいただけたらと思っています。
まり:セキシスとしての単独コンサートやオリジナル曲の制作にも挑戦していきたいです。そして、日本だけでなく海外での公演にも挑戦し、私たちの音楽を幅広い世代や地域の方々に届けていきたいです。

【プロフィール/セキシス】関谷まり(ヴァイオリン)と関谷真由(ピアノ)による姉妹ユニット。幼い頃から共に音楽を育んできた2人だからこそ生まれる、息の合った繊細かつダイナミックなアンサンブルが魅力。ヴァイオリンとピアノが織り成す豊かな響きは、聴く人の心にやさしく寄り添い、ときに力強く響き渡る。ステージでは、和やかなトークと演奏時の研ぎ澄まされた表情とのギャップも見どころのひとつ。姉妹ならではの自然体な空気感と高い音楽性が、多くの人を惹きつけている。2026年8月にYouTubeチャンネルを開設。



