My Serbia(マイセルビア)

セルビアの美・食・住の情報が集まるライフスタイルマガジン

欧州文化首都プロジェクト『ドナウのドラゴン』活動レポート

【文/滝沢 藍梨】

My serbiaをご覧のみなさま、はじめまして。滝沢藍梨と申します。

私は学生時代、SERBIA×英和プロジェクト5期生としての活動をきっかけに、セルビアについて学び、その魅力を発信する活動をはじめました。この度、EUの芸術文化事業「欧州文化首都」にセルビアのノヴィ・サド市が選ばれ、プロジェクトの一環である、『ドナウのドラゴン』(2022.7.17〜7.31)というアートプロジェクトに参加させていただきましたので、活動の記録をレポートさせていただきます。

終了報告パンフレット資料より/イラスト 滝沢藍梨

今回は、3人のセルビア人プロジェクトキュレーターの方を中心に、アップサイクルアートを制作しました。材料は古いボイラー。これを使って、参加者それぞれの国のドラゴンの文化を表現しました。これらのアートは中にゴミを入れられるようになっていて、ノヴィ・サドのドナウ川沿いのビーチ、Štrand(シュトランド)のアートフェスティバルに展示されました(展示後もŠtrandにて清掃公社JKP「Čistoća」の導電性空洞化除去システムとして利用される予定です)。

参加者は日本、タイ、イタリア、ロシア、スウェーデン、ブルガリア、スウェーデン、セルビアなどから集まり、異文化理解と交流を深めました。

終了報告パンフレット資料より

私は日本の龍信仰について改めて調べ、治水にまつわる伝説から、水の循環、自然の循環について表現しました。

デザインコンセプト

水が、雨が降り川に流れ生き物が利用して排水し、土に染みてまた雨となり降り注ぐように、ごみもまた、時には肥料に、時には負の遺産となって私たちのもとに帰ってくる。だからこそ、リサイクルに関心を寄せてほしい。そんなメッセージを込めました。

キュレーターによると、アップサイクルは第一に材料、第二に表現の目的だそうです。できるだけ、新しい材料を加えないで、パーツを切り貼りすることで意味あるものに作り替える。今回、この古いボイラーをアップサイクルしたアートインスタレーション制作によって、アートによる問題提起と人々の関心を集める力を再確認することができました。私のアートインスタレーションは、Štrandの正門付近にあり、ムービーナイトの時にはたくさんの方の目に触れていただき、とても嬉しかったです。

Štrandのムービーナイト
集合写真

ここからは、私個人の肌で感じたことについて、少し綴りたいと思います。

私は、2016年に大学の授業でセルビアに出合い、理解を深め、学んでいく中で、いつか必ず訪れたいと思うようになりました。それから紆余曲折あり、コロナ禍に見舞われ、世界情勢が悪化して、海外に行くことは夢のまた夢という現実に直面しました。もう一生訪れる機会はないかもしれない、とすら思いました。しかし、こうした早い段階で今回のプロジェクトに関わるEU・ジャパンフェスト日本委員会とたくさんの方々のご支援のお陰でセルビアを訪れる機会を得ることができました。感謝してもしきれません。

それなのに、私はセルビアに着いて3日ほどで人生最悪レベルの風邪をひきました。ルームメイトからもらったヨーロッパの風邪はとても手強かったです。1週間声が出なくなり、ベッドから起き上がることもできなくて、必然的に人の手をたくさん借りました。

これまで、恩師から「セルビアの魅力は人だよ」という言葉を何度も聞いてきました。手間と時間を割いて面倒を見てくれ、身に染みて有り難く感じました。コミュニティのために力を貸そうという精神をこのキャンプ全体を通して、特徴的に感じました。とても心が温かく、人との時間が感じられる時間でした。カメリアティー(マシュマロティー)、ミントティー、レモン、ハチミツ。出会う人、出会う人が風邪に効くものを渡してくれました。

プロフェッサーから頂いたレモン

お陰様で、セルビアの民間療法にとても詳しくなりました。確かに、プールやビーチに行けませんでしたし、観光やアクティビティの機会も逃してしまったかもしれませんが、本当に人の心に触れる機会を得ることができ、忘れられない経験をすることができました。そして、私はきっとまた1つ免疫を獲得し、生物としても強くなれたはずです。先輩方のお話を聞いていると、初めて訪れた国で、風邪をひくことはよくあるみたいです。もっともっと、セルビアのことを知ることができるように、これからも学び続けていきたいです。

ご覧いただきましてありがとうございました。


【文/滝沢 藍梨】アーティスト/ 俳優/ 絵本作家。2012年より俳優活動開始。映画制作をはじめとする様々なアート・デザイン制作に携わる。2019年・2020年「SERBIA×英和プロジェクト・セルビア親善大使」。絵本制作では、少子化の最中、子どもたちに1冊でも多く母国語で読める絵本を遺したいとの想いをのせて活動している。人は、自分の手のひらの中にだけある選択肢で解決出来ずに悩む。自らの芸術を通じて、誰か1人にでも、あと1つ、新しい選択肢を授けることを目標とし、日夜活動を続ける。

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets