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セルビアの世界遺産【ぐるりセルビア暮らし旅・第4回】

【文・写真/酒井 貴子】

Zdravo!(こんにちは!)

少し時間が空いてしまいましたが、今回はセルビアのユネスコ世界遺産についてご紹介したいと思います。

世界遺産には大きく分けて「文化遺産」、「自然遺産」、その双方を持つ「複合遺産」の3種類があり、年に一度開催される世界遺産委員会の会議で審議・決議が行われ、登録可否が決定されます。

現在、セルビアのユネスコ世界遺産として登録されているのは以下の5つで、全て「文化遺産」となります。(以下、登録年順)

  1. スタリ・ラスとソポチャニ(文化遺産)(i)(iii) 1979
  2. ストゥデニツァ修道院(文化遺産)(i)(ii)(iv)(vi) 1986
  3. コソヴォの中世建造物群(文化遺産)(危機遺産)(ii)(iii)(iv) 2004, 2006 
  4. ガムジグラード・ロムリアーナ、ガレリウスの宮殿(文化遺産)(iii)(iv) 2007
  5. 中世墓碑ステチュツィの墓所群(文化遺産)(iii)(vi) 2016

※世界遺産は全部で10の基準があり、文化遺産は(i)〜(vi)、自然遺産が(vii)〜(x)。上記ローマ数字がその物件の世界遺産登録にあたり評価された基準を示しています。

(参考)世界遺産検定サイト https://www.sekaken.jp/whinfo/touroku/

*③は2006年から危機遺産に登録

*⑤は、クロアチア・ボスニア・ヘルツェゴビナ・モンテネグロ・セルビアの4カ国に渡るトランスバウンダリー・サイト(国境を越える遺産)として登録

さて、私が実際にセルビア在住期間中に訪問できたのは、①②④の3つでした。

セルビアでは、日本ほどに「世界遺産だから訪問しよう」という風潮はあまりなく、ストゥデニッツァ修道院などの宗教関連施設や遺跡はもちろん知られていますが、⑤などは近隣在住者でも足を運んだことがない、という人も多かったです。

実際私が住んでいたのは⑤の近くでしたが、セルビアは車社会のため、足がないとなかなか行けず…残念ながら訪問はできませんでした。なお③についても業務上の都合で行けていません。

そのため今回ご紹介するのは、以下の3つの世界遺産になります。

1 スタリ・ラスとソポチャニ

セルビア南西部に位置するイスラム教徒が多く住むノヴィ・パザールから15km西側に行ったところに位置する遺跡。9世紀頃からラシュカ川周辺地域に栄えたこの地域は、スタリ(古い)・ラスと呼ばれていました。ラシュカ初期の首都の一つだった都市遺跡になります。登録されているソポチャニ修道院は1260年頃にセルビア王国のステファン・ウロシュ1世の寄進で建設されました。教会の内部を飾る壁画が有名で13世紀後半~14世紀後半に制作されたとされるビザンチンのフレスコ画で知られています。

スタリ・ラスの遺跡は、非常にアクセスが悪く、車がないといけないのですが、かなり傾斜のある細い一本道で、対向車が来ないことを祈りながらの道でした。運転に自信がない方にはオススメできないかもしれません。一方で頂上の景色は素晴らしかったです!

なお、ソポチャニ修道院はノヴィ・パザールからもツアー等で訪問できるかと思います。

スタリ・ラス
スタリ・ラス
スタリ・ラスからの眺め
ソポチャニ修道院
2 ストゥデニツァ修道院

セルビアの世界遺産と聞いて、一番知られているのがセルビア正教会のストゥデニッツァ修道院です。場所はセルビア中部のクラリエボから南西約39kmに行ったところにあります。

1190年に中世セルビア王国ネマニッチ朝の建国者、ステファン・ネマニャにより建設されました。ラシュカ派と呼ばれるビザンチン様式(内部構造)とロマネスク様式(外観)とが混合した建築様式になります。聖母聖堂の壁を彩るフレスコ画で知られていて、特に13世紀初頭に描かれた「キリストの磔刑(たっけい)」が有名です。こちらはとても整備されており、ユネスコの世界遺産であるとわかる看板や敷地内MAPも設置され、セルビアを代表する観光名所となっています。

時間が限られている方はベオグラードからも日帰りツアーが出ているので、それに参加するのが良いでしょう。片道3時間くらいかかりますが、ガイド(英語)さんの説明等も聞けて、建築的特徴やセルビア正教会について等、知ることができます。

3 ガムジグラード・ロムリアーナ、ガレリウスの宮殿

ガムジグラードは、ベオグラードから東に向かったところにあるザイェチャルという町周辺にある遺跡で、旅行者でも自力でバスで向かうことができる場所でもあります。この遺跡は古代ローマ皇帝ガレリウス(305-311 AD)が母をたたえて建造した街で、母の名ロムラからつけられたと言われています。ここに彼は豪華な宮殿や寺院、穀物庫などを建設しました。この遺跡を見下ろすマグラの丘にガレリウス帝とその母の2つの墓と記念碑があります。

個人的なオススメは最初にザイェチャル市内にある国立博物館に足を運ぶことです。遺跡から発見されたモザイク画他出土品や歴史的背景の説明などがあり、それをまず見てから遺跡サイトに向かうとさらに想像が膨らみます。

遺跡の場所はザイェチャルからタクシーで15分程走ったところになります。城壁や宮殿跡、公衆浴場跡などを見ることができ、柱やモザイク床の一部も当時の姿の面影が伝わってきます。

ちなみにこちらは「Roman Emperors and Danube Wine Route」の構成要素の一つにもなっており、このローマ帝国時代とワインエリアを巡る旅というのも、遺跡やワイン好きには魅力のコースです。

なお、セルビア政府観光局のサイトでも世界遺産についての紹介ページ(英語)がありますので、よければ見てみてくださいね!

Cao!


【文・写真/酒井 貴子 Takako Sakai】上智大学比較文化学部卒業後、ラジオ制作会社・出版社にて編集業務に携わる。2010年に半年間の世界一周一人旅へ。その際に初めてセルビアの地を踏むが、その後将来セルビアで生活するとは想像もつかなかった。震災を機に観光業へ転身。日本、東京、ハワイなどデスティネーションの観光マーケティング・PR業務に10年以上携わる。ご縁があり2022年2月からセルビアへ。セルビアの観光地・ズラティボルで現在、観光業に従事。ワインエキスパート。

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