【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】
セルビアの農村に暮らす人々にとって、冬は畑や菜園、農場での作業から離れ、ひと息つく季節です。この時期になると村全体が静まり、穏やかな空気に包まれます。農道で人や動物に出会うことも少なくなり、人々は暖かな家の中で過ごし、動物たちはそれぞれの小屋や囲いの中で寒さをしのぎます。冬は休息の時間であると同時に、春に始まる大きな仕事に向けて力とエネルギーを蓄える時期でもあります。

日々の暮らしの中で欠かせないのは、家畜の世話です。餌を与え、手入れをし、そして冬に生まれることの多い子どもたちを見守ります。畑に出ることが減っても、農村の暮らしには相変わらず気を配ることが多くあります。


12月から1月にかけて、セルビア正教会の信者たちは多くの宗教的な祝日を迎えます。クリスマス(1月7日)や新年(1月14日)に加え、聖ニコラ(12月19日)、聖ステヴァン(1月9日)、聖ヨヴァン(1月20日)といった守護聖人の祝日(スラヴァ)が続きます。そのため1月は、家族が集まり、今も大切に守られている伝統的な祝祭日を過ごす月とされています。



年の初め、セルビアには多くの雪が降り、記憶に残るほどの厳しい寒さが続きました。雪はおよそ3週間も残り、子どもたちは一日中、冬ならではの遊びを楽しむことができました。しかし、多くの山間の村では大量の雪の影響で数日間にわたって停電が起こり、低温の中での生活は困難を極めました。そのような状況では、人々は自分たちの農場に備えてある食料や薪に頼りながら、寒い日々を乗り越えていきます。

冬の村の風景は特別で、自然は静かで穏やかに感じられます。冬の間は、夏や秋に用意した食料が中心となり、冷凍保存したものや保存食が食卓に並びます。新鮮な果物や野菜は少なくなりますが、乾燥食品や瓶詰め、そして自家製の肉類、とくに燻製や乾燥させた肉製品が多く食べられます。

こうして冬の日々は静かに過ぎていき、農村の暮らしは寒さや天候に合わせて続いていきます。人々は冬の季節を受け入れ、特に雪のある日々を楽しみます。セルビアでは、山間部を除けば雪が降ること自体が少なくなってきているからです。

(訳/小柳津 千早)
【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】絵本作家。自身の本を通して、子どもたちに農村生活、民俗行事、伝統、家族の価値観を伝える。2024年5月にセルビアの農場の一日を描いた初の書籍『One day on the farm』を出版し、翌年にセルビア児童文学界で最も権威がある「ドシテイのペン」賞を受賞した。ほかにも、農場の四季をテーマにしたシリーズ本も刊行。書店でのワークショップを多数開催している。


