【構成/My Serbia】
テコンドーの西田茉央選手は今年2022年春からセルビアに活動の拠点を移し、首都ベオグラードのテコンドークラブで日々トレーニングに励んでいます。全日本テコンドー協会が主催する昨年10月の全日本学生選手権(-53Kg級)では見事に優勝し、最優秀選手にも選出。続く12月の全日本選手権(-53Kg級)でも優勝を手にするなど、日本を代表する選手です。パリ2024オリンピック競技大会の出場、メダル獲得も期待されています。さらなる成長を求めて、セルビアで新たなスタートを切った西田選手にお話をうかがいました。(聞き手/小柳津 千早)
セルビアはレベルの高い選手が多く、自分のファイトスタイルと似ている
――今年の春からセルビアでのテコンドー留学が始まりました。セルビアに拠点を移した主な理由を教えてください。
新型コロナウイルスの流行により日本国内の大会はもちろん、2年間海外での試合に参加できないという状況が続きました。しかし、その間でも海外では試合を行っていました。その頃からヨーロッパを拠点に多くの大会に出場できるよう留学を考えていました。セルビアを拠点に選んだ理由は、オリンピック3大会(2012、2016、2020)でメダルを獲得しており、レベルの高い選手が多く、また、自分のファイトスタイルと似ていると思ったからです。
――西田選手が所属するテコンドークラブ「ガレブ」はセルビア代表のコーチを務めるドラガン・ヨヴィッチ氏を中心に、指導者が充実しています。また、昨年の東京2020オリンピック競技大会で金メダルを獲得したミリツァ・マンディッチ選手や銅メダルのティヤナ・ボクダノヴィッチ選手らを輩出しています。世界トップクラスの指導を受け、セルビアの選手たちと練習することで、新たな気づきはありますか。
やはりトップレベルの指導を受け、日本で行っている内容と同じ練習を行っていても、捉え方や考え方、また、一緒にトレーニングをするチームメイトの身体能力が異なるため毎日が新しい発見、学びばかりです。また、大会数が日本の数十倍行われているため、チームのみんなの経験数が圧倒的に異なります。日本ではあまり経験できないタイミングや距離からの攻撃など学ぶことがたくさんあります。
――クラブに所属するセルビアの人たちは西田選手をどのように受け入れてくれましたか。セルビア人はとても人懐っこいので、すぐに仲良くなれたのではないでしょうか。
私自身、人見知りでセルビア語も英語もできないため不安に思っていましたが、チームのみんなが話しかけてきてくれたり言葉を教えてくれたりと、親切にしてくれます。今ではボーリングに行ったりカフェに行ったりと遊びに行くこともあります。チームのみんなのお陰で、今は充実したトレーニング生活を行えています。
――練習は毎日ですか? 一日のスケジュールを教えてください。また、日本にいるテコンドーのコーチや友人たちとはどんな話をしていますか。
基本、午前・午後の二部練習です。月~金曜日は、テコンドーまたはジムでのフィジカルトレーニングを行っています。土曜日は朝にランニングトレーニングを行っています。試合の有無など、そのときどきによってスケジュールに変更はあります。日本の所属先の先生とは週に一度トレーニング内容、セルビアでの生活、日本のテコンドーの情報などについてテレビ電話をしています。友人たちとはセルビアで行った場所など他愛も無い会話をしています。
――セルビアに来てからすぐに5月の国内大会で銀メダル、続くオーストリア・オープンで9位、6月のクロアチア・オープンでは銅メダルを獲得しました。セルビアに来てから短期間で多くの実戦を積んでいますが、大会を通して成長を感じていますか。
5月の大会では、今まで日本でトレーニングを積んできたことがどこまで通用するか確認を目標に頑張りました。決勝戦で負けてしまいましたが、今までトレーニングしてきたことは間違っていなかったと感じました。オーストリア・オープン、クロアチア・オープンはG2大会であったため、レベルが高い試合になります。オーストリア・オープンでは結果は出ませんでしたが、そこでの反省を活かしクロアチア・オープンではメダルを獲得することができ、成長を感じることができました。ようやくスタート地点に立つことができたので、私自身の気持ちに気合が入りました。
目標はオリンピックに出場・メダル獲得
――一方で外国滞在ならではの問題、例えば食事と減量、大会出場時の長距離移動など、体調管理が日本よりも難しいと思われますが、どのような対策をしていますか。
食事や減量はクラブチームの栄養士の方にアドバイスを頂きながら、日本にいたときと変わらず調整しています。体調管理もお世話になっているセルビア在住の日本人の方にいろいろ聞きながら管理しています。日本を離れ、更には一人なので日本にいたときよりもより慎重に自己管理するようになりました。大会時の長距離移動はまだなれていません…しかし、日本だと経験できない陸路での国境を超える経験は毎回ワクワクします。
――セルビアでのテコンドー人気は日本と比べてどうですか。多くの子供たちがクラブに通っている姿が見られますが。
世界ではテコンドーの競技人口は多いですが、日本ではまだまだマイナー競技であるため競技人口は少ないです。日本でもテコンドーをもっと知っていただけるように、成績を残していきたいです。
――最後に、今後の目標を教えてください。
パリ2024オリンピック、ロサンゼルス2028オリンピックへの出場・メダル獲得を目標に、多くの試合に出場し成績を残していきます。
【プロフィール/西田 茉央(にしだ まお)】IPU・環太平洋大学在学中。5歳から空手を始め、10歳のときにテコンドーに転向。中学3年生のときに奈良県から岡山県に引っ越し、現在の所属先である兵庫県テコンドー協会姫路支部に所属。