【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】
5月は、農場が一年でもっとも美しく輝く季節です。
春のやわらかな陽差しに包まれ、気温は25度ほどまで上がり、農場が鮮やかな緑と花々の色彩に満ちていきます。そして何より、この季節には畑や果樹園から、今年最初の恵みが届き始めます。

森の木々はすっかり葉を茂らせ、大地は若草に覆われます。羊や牛たちは、一日中外で青々とした草を食みながら、のんびりと過ごしています。

春先に植えた野菜や果物は少しずつ実り始め、食卓には、わけぎ、新じゃがいも、みずみずしいイチゴやサクランボが並ぶようになりました。




村のあちこちには、アカシアの甘い香りが漂っています。アカシアは、良質な蜂蜜が採れる木としてセルビア各地に広く分布しており、この季節になると白く可憐な花を咲かせます。ほのかに漂うその香りが、村に初夏の訪れを感じさせてくれます。


一方で、この時期は農村にとって大切な仕事の季節でもあります。
セルビアの農家にとって欠かせない作物であるトウモロコシの種まきが、各地で盛んに行われます。多くの手間と力仕事を必要としますが、家族みんなで力を合わせながら、その作業も少しずつ終わりへと近づいていきます。あとは、秋の収穫まで元気に育ってくれることを願うばかりです。


そして、畑の作物にとって欠かせないのが雨です。
5月には何度か雨の日が訪れますが、その雨は植物たちの成長を支える大切な恵みでもあります。セルビアの村では、「雨は空からの贈りもの」とよく言われています。
自然がもっとも生命力にあふれる5月。
農場では、花の香りや鳥の声、土の匂いに包まれながら、新しい季節の豊かさを感じる日々が続いています。

【文/ネヴェナ・ヨヴィチッチ】絵本作家。自身の本を通して、子どもたちに農村生活、民俗行事、伝統、家族の価値観を伝える。2024年5月にセルビアの農場の一日を描いた初の書籍『One day on the farm』を出版し、翌年にセルビア児童文学界で最も権威がある「ドシテイのペン」賞を受賞した。ほかにも、農場の四季をテーマにしたシリーズ本も刊行。書店でのワークショップを多数開催している。


