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セルビア滞在記2022―壁画修復プロジェクト③ ワークショップ編

【文/嶋田 紗千】

「セルビア滞在記2022」(視察編講演編)の最終回は「ワークショップ編」です。

修道院で折り紙

セルビア中世美術を研究していると、どうしても山奥の修道院へフィールドワークで行かねばなりません。思いがけず、地元の人々に助けてもらうことがよくあり、そのお礼として持っていた紙で折鶴を作って差し上げることを留学時代からよくしていました。

そのため、近年千代紙を持参することから、その場で知り合った子供と一緒に鶴やカエル、風船などを作るようになりました。今では子供だけでなく、大人にも教えるようになって修道院でのコミュニケーション・ツールとして折り紙を使っています。一枚の紙が立体的な造形物に変わる折り紙はセルビア人にとってとても興味深いもののようです。

ミランさんへ贈った折鶴たち
ミランさんに折鶴を

2019年にセルビアへ調査で行った時、突然友人のアーティストであるミラン・トゥーツォヴィッチ氏が亡くなりました。その時、何をしたらいいのかよく分からず、持っていた千代紙で鶴を作って届けたら、娘のヨヴァナさんが、「父ミランが天国へ行っても日本へ旅できるように」と折鶴を一緒に埋葬しました。

今年の6月に修復プロジェクトでセルビアへ行くことをヨヴァナさんに伝えたら、「故郷で父を偲ぶイベントを行うので、参加しませんか」と誘われました。日本で数回展覧会を開催したミランさんとは10年近く交友があり、最後に来日した時は私が彼のコーディネータを務めました。ミランさんから出身地ポジェガの話をよく聞いていたので、いつか行ってみたいと思っていました。

そのイベント「ミランの日々」では子供たちに詩や絵画のワークショップを行って展示するということなので、私も折り紙ワークショップをすることになりました。緑豊かな高台にある小さな小学校の校庭で子供用の低い机と小さい椅子に座りながら、10人の子供たちと楽しい時間を過ごすことができました。

ポジェガの小学校での折り紙ワークショップ
やはり机がなければ!

9月頭のチャチャクでの講演会の後にラシュカの小中学校から講演の依頼がありました(先週は講演内容についてお伝えしましたが、今週はワークショップについて)。折角なので、このたくさんある千代紙でラシュカの子供たちにも日本の伝統的な遊びを教えたらよいと思い、講演内容を短縮して、ワークショップをすることにしました。折り紙は室町時代の武家の折形礼法(おりがたれいほう)に由来した日本の伝統文化です。伝統文化を大切にしているセルビアの子供たちにも意義深いものとなるでしょう。

講演会場は学校のホールでしたが、なんと机がありませんでした。そのため、3割くらいの生徒が断念してしまい、完成に至らなかった子がいたことは本当に残念です。まさか学校で机がないとは思わなかったです。今後必需品に「机」を加えることにします。

ラシュカの小中学校での折り紙ワークショップ
なんで折れないの?

日本では子供の頃から折り紙に慣れ親しんでいるので、なぜできないのか良く分かりませんが、セルビアでは80%くらいの人が上手く折れません。特に角と角を合わせることができなく、またしっかりと折り目を付けることもできません。

しかしながら、なぜか5人に1人くらい私の説明をすぐ理解して、綺麗に折れる子(人)がいます。できる子ができない子に説明してくれるので、その場でアシスタントができるような感じになります。そういう助け合いの姿を見るのは微笑ましくて好きです。

年齢を考慮して作るものを決めます。小学校低学年以下なら、まず風船を作ってみて、出来が良ければ、カメラやカエルなど動きのある造形物を一緒に作ります。高学年以上は、最初から折鶴を試みます。鶴は立体的な姿がとても美しく、一枚の紙が劇的に変貌するので、感動する人が多いです。完成した後はみな嬉しそうに持ち帰ります。たまに部屋に飾った写真を送ってくれる人もいます。

真剣に話を聞くポジェガの小学生
インタビューは苦手

余談ですが、このポジェガのイベントは思いのほか大規模で、ワークショップの翌日に作品の展示やコンサートも行われました。地方テレビ局の取材があり、突然私も何か話すことになりました。

どうしてセルビアに来たのか問われたので、フレスコ画の修復プロジェクトについて説明しました。あまり上手く話せませんでしたが、その後全国放送で私の拙いセルビア語のインタビューが流れたそうです。テレビのインタビューは本当に苦手です。

ラシュカの講演会でも地方テレビ局が取材に来てくれました。前回の失敗を糧にラシュカではきちんとプロジェクトについて話すことができました。日々精進です。

クリスマスの装飾に

今年も各修道院で折り紙ワークショップを個人的に決行しました。コンチュル修道院の修道女アニシヤさんがとても上手にできて非常に驚きました。折り紙でクリスマスの室内装飾をしたいとおっしゃったため、その場で持っていた千代紙約100枚を差し上げました。どんな装飾になるのか楽しみです。

修道女アニシヤさんと折り紙

【文/嶋田紗千(Sachi Shimada)】美術史家。岡山大学大学院在学中にベオグラード大学哲学部美術史学科へ3年間留学。帰国後、群馬県立近代美術館、世田谷美術館などで学芸員を務め、現在、実践女子大学非常勤講師、セルビア科学芸術アカデミー外国人共同研究員。専門は東欧美術史、特にセルビア中世美術史。『中欧・東欧文化事典』丸善出版に執筆。セルビアの文化遺産の保護活動(壁画の保存修復プロジェクト)に従事する。

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