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初夏の庭先に実るさくらんぼ【セルビア、旬のもの図鑑・第3回】

【文/小柳津 千早

セルビアでは、さくらんぼはとても身近な果物です。都市部を少し離れた村へ行くと、多くの家庭の庭にはさくらんぼの木が植えられています。収穫の時期になると枝が見えなくなるほど実をつけることもあり、一つの木から驚くほどたくさんの実が収穫できます。家族だけでは食べ切れず、近所へおすそ分けしたり、親戚や友人に配ったりするのも珍しくありません。

一方で、さくらんぼは天候に左右されやすい果物です。春先の霜(しも)、雹(ひょう)などの影響を受けるため、前年には豊作だった木でも、翌年にはほとんど収穫できないことがあります。

旬はおおむね6月から7月。市場では真っ赤なさくらんぼが並び、その甘さは初夏ならではの楽しみです。日本では少し高級なイメージのあるさくらんぼですが、セルビアでは季節を代表する身近な果物として、多くの人が気軽に味わっています。

セルビアをはじめとする旧ユーゴスラビア地域には、古くから栽培されている伝統的な品種があります。その代表格がルシュト(Rušt)で、大粒でハート形の果実は、硬めの果肉と強い甘みが特徴です。多くの家庭で庭木として育てられており、収穫期にはたわわに実る姿を見ることができます。

近年では海外原産の品種も広く栽培されています。フランス原産のブルラ(Burlat)や、チェコ原産のコルディア(Kordia)は、大粒で黒みを帯びた濃い赤色の果実が特徴で、甘みと酸味のバランスに優れています。

セルビアには、甘いさくらんぼだけではなく、酸味が強いサワーチェリーも広く親しまれています。見た目はさくらんぼによく似ていますが、実はやや小ぶりで柔らかいのが特徴です。そのまま食べることもできますが、セルビアではジャムやコンポート、ジュース、お菓子の材料として使われることが多く、家庭でも毎年大量に保存食が作られます。特にサワーチェリーを使ったパイやケーキは、セルビアの家庭で昔から愛され続けている定番のおやつです。

セルビアを訪れる機会があれば、ぜひ市場へ足を運んでみてください。真っ赤に並ぶさくらんぼを眺めながら季節の訪れを感じ、甘いさくらんぼと爽やかなサワーチェリーを食べ比べてみるのも、この国ならではの楽しみ方です。


【文/小柳津 千早】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う女性と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で約350人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半、在日セルビア共和国大使館のスタッフとして10年間勤務。2021年10月中旬からセルビアに移住し、現在は通訳の仕事のため単身で一時帰国中。YouTubeチャンネル「セルビア暮らしのオヤ」で現地の自然、文化を配信していましたが、今は日本にいるため更新されていません(泣)。