My Serbia(マイセルビア)

セルビアの美・食・住の情報が集まるライフスタイルマガジン

セルビア人留学生に聞いてみたオススメ料理と美意識

【文/SERBIA×英和PROJECT】

Dobar dan!(こんにちは) 私たちは東洋英和女学院大学(横浜市)の「国際教養セミナー」(担当講師:町田小織)を受講する風間美結、吉田萌々香、金澤雅です。この授業は日本で唯一、駐日セルビア共和国大使館と連携しており、日本人にセルビアの魅力を伝えることをミッションとしています。

皆さんはセルビアと聞いてどういうイメージを持ちますか?

My Serbiaをご覧の方は、具体的なイメージができる人も多いかと思います。しかし、日本の若い世代には、まだまだ知られていないという現状があります。前回、別のグループがセルビアの結婚式をご紹介しましたが、私たちは若い人達に興味をもってもらいやすいスイーツやアニメなどを中心に、セルビアの「食」「美」を取り上げます。

ターゲットである若者の目線でセルビアの魅力を語ってもらうために、セルビア出身の留学生、アンジェラさんにインタビューする機会をいただきました。

アンジェラ・ビシェヴァツ(Anđela Biševac)さん
セルビアの「食」について

ーーまず初めに、セルビアの食文化について教えてください。

セルビア料理はイタリアやオーストリアなどの様々な国の食文化が融合しています。お肉料理が多いです。デザートは甘く、メインはスパイスが強い料理が多いです。また、セルビア料理にはパプリカやパプリカパウダーがよく入っていて、オーブンを使って調理することが多いです。

セルビアでは、クリスマスとイースターがとても大切な日です。クリスマスは1月7日に行われ、前日の1月6日に家族が集まります。クリスマスの朝は教会でパンとワインをいただきます。そして、牛乳とチーズ、パプリカをたくさん買ってきて、それを焼いたものを食べたり、夏の間に作っておいたピクルス(野菜、ビネガー、砂糖を瓶に入れて保存)を食べたりします。

セルビアのクリスマスの過ごし方

セルビアの主な宗教はセルビア正教で、ユリウス暦(旧暦)を採用している為、クリスマスは1月7日です。クリスマスイブの1月6日には、祝いの準備などが行われます。また、肉、卵、乳製品を食べません。 セルビアのクリスマスの過ごし方については、以下のサイトでティヤナさんが詳しく解説しています。

ーーアンジェラさんがよく食べていた料理や、好きな料理を教えてください。

プー二ェネ・パプリケ(Punjene paprike)とカラジョルジェバ・シュニツラ(Karađorđeva šnicla)、プロヤニッツァ(Projanica)、アイバル(Ajvar)などがあります。

プー二ェネ・パプリケはパプリカの中に肉やお米などを詰めたもので、セルビアではよく食べられる料理です。

プー二ェネ・パプリケ(画像提供:イェレナ・イェレミッチ)

カラジョルジェバ・シュニツラの”カラジョルジェ” は、オスマン帝国時代に蜂起した指導者で、セルビアでは英雄とされている人の名前です。豚ヒレ肉を薄くしたものに、カイマック(Kajmak)を塗ったものを巻き、パン粉で揚げます。タルタルソースを添えて食べます。

カラジョルジェバ・シュニツラ(画像提供:イェレナ・イェレミッチ)

カイマックとはセルビアならではの乳製品です。牛乳を温める時にできる被膜をすくい、その被膜を何日間か発酵させたものです。

カイマック(画像提供:イェレナ・イェレミッチ)

プロヤニッツァは、マフィンのようなパンです。セルビアではパンをよく食べます。プロヤニッツァはそのうちの一つで、チーズやヨーグルトを入れたりします。

プロヤニッツァ(画像提供:イェレナ・イェレミッチ)

アイバルはパプリカ、ナス、にんにく、油、砂糖、塩、コショウが入ったペーストです。セルビアでは大きくて先の尖った形をしたパプリカで作ります。とてもおいしく、セルビアではパンに塗ったり、肉の付け合わせとしてよく登場します。

日本でアイバルを手に入れるには?

セルビアのワイン・食材通販の「モンドデリシャス」で購入できます。また、ティヤナさんがアイバルの作り方を動画(Youtubeチャンネル「Tiki’s Kitchen」)で説明していますので、ご覧ください。

ーー若者におすすめのデザートはありますか?

クロッフネ(Krofne)やクネドレ・サ・シュリーバマ(Knedle sa šljivama)、マコヴニャチャ(Makovnjača)がおすすめです。

クロッフネは揚げパンで、ジャム、バニラやチョコレートのカスタードを詰めたり、トッピングしたりして食べます。

クネドレ・サ・シュリーバマ はプラムをじゃがいも、卵黄、バターで作った生地で包み、ゆでたものです。大きな団子のような形をしています。プラム以外にも、チョコレートやチェリーなどを詰めて様々なバリエーションで楽しめます。セルビアの伝統的なお菓子ですね。

マコヴニャチャは、ケシの実のロールケーキです。具材にレーズン、蜂蜜、オレンジの皮、砕いたクルミなどを加えて作ります。

マコヴニャチャ(画像提供:イェレナ・イェレミッチ)
セルビアの「美」について

ーー日本のアニメや漫画は流行していますか?

日本の漫画やアニメを好きな人は普通にいます。ヨーロッパでは『NARUTO -ナルト-』や『BLEACH』が流行しています。ちなみに私は『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『エヴァンゲリオン』などが好きです。セルビアでも、アニメや漫画好きの人たちの集まりや、コスプレ、アニメなどに関するクイズ大会も開かれます。

一方で、アニメに興味がない人達にとっては、アニメは子どものものという印象が強く、日本に比べて「アニメ好き」を言い出しにくい面があります。

ーー「美」に対する考え方に日本と違いはありますか?

日本人は見た目に関するルールや決まりが多いと感じることがあります。例えば「細くあるべき」とか「目は大きくあるべき」とか。ヨーロッパの人たちは、誰か好きな人のために頑張る人が多く、その努力やその人の考え方などを評価することが多いです。

ーー とても素敵な考え方ですね。アンジェラさん、貴重なお話をありがとうございました

<了>

最後に、インタビューにご協力頂いたアンジェラさん、セルビア料理の画像を提供してくださったイェレナ・イェレミッチ(Jelena Jeremić) さんに心より御礼申し上げます。イェレナさんは、セルビア料理についての本を日本語で出版されています。記事に記載した料理の詳細もこの本から参考にさせていただきました。

『イェレナと学ぶセルビア料理』著者:イェレナ・イェレミッチ / 発行:セルビア日本音楽交流推進の会/発売:ぶなのもり

取材後記

風間 美結
セルビアに関することを調べ、また実際にセルビア料理を作ってみたりして、約5か月間セルビアという国に向き合ってみて、自分に現れた変化がありました。それは、地理的には今住んでいるところから遠くても、セルビアを身近に感じられるようになったということです。今年の夏に行われた東京オリンピック・パラリンピックにおいても、自然とセルビアという国の名前を探したり、セルビア人選手の試合を積極的に見たりするようになりました。これは今回の授業がなかったら、自分に現れなかったものだと思います。今回の授業を通して、セルビアの魅力を沢山知ることが出来たので、いつかセルビアという国に自分自身が訪れてみたいと思います。
吉田 萌々香
この授業は、私達も含め、若い世代がセルビアについてほとんど知らない現状から始まり、どうしたら若い人達にセルビアをもっと知ってもらう事ができるかを柱に、活動を行ってきました。その一環としてインタビューを行い、インタビューを通して学んだこともあります。セルビアの特徴や魅力だけでなく、インタビューの交渉や雑談、画像の許諾等を通じて、セルビアの人達は人当たりがよく、親切であるという事も感じました。どこか遠くの国という感覚がありましたが、セルビア出身の方々と知り合う機会を通して、セルビアが少し身近な存在になりました。セルビアについて様々なものを得て、様々な事を考える濃い体験だったと思います。
金澤 雅
この授業を受講する前は正直、「セルビア」と聞いて思い浮かぶものが何もありませんでした。そのような状態のまま、大使館の方々からの「セルビアの魅力を若い人たちに伝えて欲しい」というミッションにより、活動を開始しました。しかし、何をすればいいか、なかなか案が思い浮かびません。そこで、自分の知らない国について興味がわくきっかけとなるものは何かと考えたところ、誰しもが馴染みのある「食」にたどり着きました。この授業が終わっても、周りの人たちに何か一つでもセルビアについての魅力を発信し続けようと考えています。いつか自分自身がセルビアを訪れ、実際に現地の方々と触れ合わないとわからない魅力を感じ、それらを日本人に伝え、近い将来「セルビア」という国が、日本で知らない人はいないという状態になったらいいなと思います。

インタビュー実施日:2021年7月22日
調査時間:約1時間
語り手:神奈川大学大学院外国語学研究科欧米言語文化専攻博士前期課程 アンジェラ ビシェヴァツ(Anđela Biševac)さん
聞き手:吉田 萌々香
編集:風間 美結、吉田 萌々香、金澤 雅

【文/ SERBIA×英和PROJECT】東洋英和女学院大学の「国際教養セミナー」(担当:町田小織)を受講する学生で構成。日本人にセルビアの魅力を伝えることをミッションとし、2021年度は7期生が活動しました。

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