【文/石川 美紀子】
セルビアの首都ベオグラードから高速道路で30分ほどの場所に、セルビアサッカー協会が威信をかけて建設したスポーツセンターがあります。サッカー協会のオフィスや宿泊施設、記者会見ルームに加えて、サッカーフィールド6面を備え、ドラガン・ストイコビッチ、ピクシー率いるセルビアA代表の合宿に必ず使用されている施設です。ここでは女子の代表戦やU21などの代表アンダーカテゴリーのユーロ予選なども開催されるので、私はセルビア滞在時いつも、この施設に何度も通っています。ほとんど「通勤」しているレベルです笑。
このスポーツセンター、高速道路の出口すぐの一面広がる畑の中にあるので、車で通勤するならこの上なく便利だと思います。実際、A代表の合宿初日、世界各国から集まるセルビア代表選手たちにとっては、空港から20分ほどで到着という完璧な立地。しかしながら、私のようにひたすら公共交通機関派の人間には、なかなか難易度の高い目的地です。ドラクエで言うなら、レベル32で最終ダンジョン手前ぐらい笑。というわけで今日は、この「セルビアサッカー協会スポーツセンターの歩き方」を、私のぐだぐだのセルビア語とふわふわな英語で聞き込み調査をした結果を基に、お送りしたいと思います。ピクシーが代表活動期間中に滞在しているホテルに泊まりたい!という方はもちろん、セルビアU17女子代表の試合を視察したい、という稀有な方(そんな人わたし以外にいるのか?)も、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
それでは、ベオグラード中心部の共和国広場からクエストを始めましょう。スポーツセンターがあるのは「Stara Pazova(スタラ・パゾヴァ)」という小さな町で、ベオグラードからは鉄道で行くのが便利です。まずはベオグラード鉄道駅を目指します。
セルビアの鉄道といえば、びっくりするほど汚くて全く時間通りに来ないものの代名詞のような存在でしたが、2022年3月、ついに高速鉄道が開業し、ベオグラードからノヴィサドが最短36分で移動できるようになりました。これまでは長距離バスで1時間半の道のりでしたから、画期的です。
けれども!まずベオグラードの鉄道駅が、街の中心部からとても離れた場所にあり、路線バスを乗り継いで行かなければなりません。なにげにこれが難易度高い。もちろんタクシーに乗れば簡単ですが、最近ベオグラードのタクシーは価格が急騰しているので、「通勤」に使うべきではありませんね。公共交通機関で行きましょう。
ベオグラード市内の路線バス、2023年夏頃から乗車券をアプリで買うシステムになったので、ダウンロードしておきます。まずは共和国広場から31番のバスに乗り、カラジョルジェで36番のバスに乗り換えます。ここ、わりと難易度高いです。なぜならベオグラード鉄道駅行きの36番の路線は、最近整備されたばかりらしく、案内板に手書きで書いてあるだけだから。理不尽!
ベオグラード鉄道駅到着。共和国広場から乗り換えを含めて、なんだかんだでここまで1時間弱かかりました。バスの料金は90分乗り放題で50ディナール(約66円)。アプリで買うようになる前のバスカードで乗っていた時代より、ずいぶん安くなったのはなぜ?
できたばかり、というかなんならまだ絶賛工事中なので、まず入り口が分からない笑。炎天下、うろうろとさまよってしまいました。内部にはホームがたくさんあるので、自分が乗る電車がどのホームに来るのか確認するのも若干難易度高め。
ただ、高速鉄道は基本的に時間通り来るので、乗ってしまえばあとは目的地で降りるだけです。これもチケットはアプリで買えます。値段は種別によっても違いますが、スタラ・パゾヴァまでだいたい300ディナール(約400円)ぐらい。長距離バスより安いし速いし綺麗で良いことだらけなので、通勤に使いこなしていきたいですね。
各駅停車でも30分ぐらいでスタラ・パゾヴァ到着。駅前には本当に何もなーいので、スポーツセンターに行くためにはタクシーに乗るか、町の中心部まで10分弱歩いてそこからバスに乗ります。ひたすら公共交通機関派としては、ここはもちろんバス一択なのですが!聞き込み調査の結果、バスは1時間に1本だということで、ピクシーの記者会見まで時間も押しているので今回はタクシーに乗ることにします。もちろんバスの方がずっと安上がりであろうことは間違いなので、また時間があるときに試してみますね(時刻表はあるかと聞いてみたら、そんなものはあってないようなものだからと言われてしまいました)。
急ぐときはスタラ・パゾヴァ駅でタクシーを呼んでもらうことになります。駅の窓口にいたご婦人はスポーツセンターと聞いてもピンとこないようでしたが、奥から登場したおじさんが、ああわかった、と親切に対応してくれて、タクシーを呼んでくれました。基本的にあまり英語は通じなさそうなので、とにかくタクシーを呼んでもらって、タクシーの運転手さんに行き先を告げるのが良いでしょう。駅から乗ると、だいたい700ディナール(約930円)です。
時間に余裕があるときは、町の中心部にある長距離バスステーションまで10分弱歩きます。道路脇にタクシーステーションがあり、そこから乗ると500ディナール(約663円)でスポーツセンターに着きます。少し節約!
ここは全く観光地ではないので、タクシーもボラれるような雰囲気はあまりありませんでした。ちなみにベオグラードの長距離バスステーションの前で待っているタクシーに乗ると、必ずボラれるので、絶対に乗らないように!タクシーアプリを使いましょう。
タクシーに乗ってしまえば10分程度でスポーツセンター到着。合宿等で使われていないときは、4つ星ホテルとして一般客も宿泊できます。私はまだ泊まったことはありませんが、ピクシーが大好きな方、ユヴェントスのヴラホヴィッチの大ファンの方、とにかくセルビア代表が好き、という方などなど、是非ここで代表合宿気分を味わっていただければと思います!
【文/石川 美紀子】セルビアをはじめバルカン地域を中心に、サッカーと文化とコミュニケーションの関係をリサーチしているフィールドワーカー。もともとの専門は言語哲学だが、本業(大学教員の端くれ)のかたわらインタビュー調査でバルカン諸国をまわり、現地で活動する日本人サッカー選手を取材するようになる。主な著書に『挑戦者たちが向き合った世界と言葉—ここではないどこかでサッカーをするということ』等。最近はスポーツフォトグラファーとしても活動中。