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セルビアスウィーツ界の女王「モスクワ・シュニット」【セルビア移住生活:第5回】

【文/小柳津 千早】

先日、ベオグラードにある1908年開業の老舗「ホテル・モスクワ」の名物スウィーツ「モスクワ・シュニット」を食べました。サワーチェリー、桃、パイナップル、アーモンド、くるみ、秘伝の特製クリームを使ったケーキです。甘酸っぱい果物、濃厚なクリーム、香ばしいナッツのバランスが絶妙です。日本のケーキのようなスポンジ生地が使われていないので、素材そのものの食感と味を楽しむことができます。1個490ディナール(約540円)です。

「モスクワ・シュニット」はホテルが改装された1974年に誕生しました。初代パティシエのアニツァ・ジェピナさんはホテル側から「改装に伴い、カフェを新たにオープンするので、誰も食べたことがない新しいケーキを考えてほしい」と依頼を受けました。アニツァさんが試行錯誤した結果、前衛的な材料の組み合わせと見た目のケーキが生まれました。

しかし、発売当初は定番のケーキメニューに埋もれ、売れ行きはいまいちでした。それでも宿泊客やカフェ利用客の間で徐々に評判となり、1980年代に入るとベオグラードだけでなく国内各地で広く認知されるようになりました。やがて全国のケーキ屋が自分たちの店舗で見た目そっくりなケーキを販売する事態に発展しました。今でもケーキ屋をのぞくと「モスクワケーキ」という名前で売られているのをよく見かけます。それだけ国民に愛され、セルビアを代表するケーキになったと言えるでしょう。

今はコロナ禍で外国旅行が難しいですが、いつかセルビアにお越しの際はぜひ本場の「モスクワ・シュニット」をお試しください。ピアノの生演奏を聴きながら、コーヒーやワインと一緒にいただくのが、一番おいしく味わえます。

モスクワ・シュニット
ホテル・モスクワの外観
カフェの様子

【文/小柳津 千早(おやいず ちはや)】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う学生と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で約350人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半、在日セルビア共和国大使館の通訳として10年間勤務。2021年10月中旬からセルビアに移住。YouTubeチャンネル「セルビア暮らしのオヤ」で現地の自然、文化を配信中。

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