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ヴォイヴォディナの大地と空【セルビア移住生活:第13回】

【文/小柳津 千早】

セルビア北部のヴォイヴォディナと呼ばれる地域には、北海道のような雄大な景色が広がっています。地平線まで続く広大な畑を眺めていると、心がとても穏やかになります。牧歌的で、どこか幻想的でもあるからです。

ヴォイヴォディナはヨーロッパ屈指の穀倉地帯として知られ、四季を通してさまざまな表情を見せてくれます。春は小麦が緑のじゅうたんを作り、夏になるとひまわりととうもろこしの背比べ競争が始まります。秋は収穫を終えた作物が枯れて黄金色に染まるとき。冬は雪で大地が静まり返ります。

空に目をやると、朝明けと夕暮れどきは太陽がこんなにもまぶしいんだと気がつきます。雲ははるか遠くまで流れ続けます。夜は星に手が届きそうなほど近くに見えます。

ヴォイヴォディナにのんびりした人が多いのは、太陽がいつになっても消えず、急いでも何も変わらないと気づいたからです。おかげで時間にやたらルーズですが、みんなそうだから何も問題ありません。

ヴォイヴォディナに住む人たちは「ここには何にもない。あるのは畑だけだよ」と自嘲気味に笑います。でもそれはきっと、昔と変わらぬ同じ景色を見て、ゆっくりとした時間を過ごしているからです。


【文/小柳津 千早(おやいず ちはや)】大学卒業後、セルビア語を学ぶためベオグラードに留学。そこで日本語学科に通う学生と出会い、無職の身でプロポーズをして見事成功。現地で約350人の前で結婚式を挙げる。帰国後、スポーツメディア関連会社に3年半、在日セルビア共和国大使館のスタッフとして10年間勤務。2021年10月中旬からセルビアに移住。YouTubeチャンネル「セルビア暮らしのオヤ」で現地の自然、文化を配信中。

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